最新記事
中国政府

特定アカウントのフォロワーを公安部が追跡...中国政府が「インフルエンサー」を狙った取り締まり強化中

CHINA’S GLOBAL REACH

2024年6月11日(火)18時40分
チャウンシー・ジャン

中国政府は過去5年間、プロパガンダやイデオロギー活動を強化してきた。報道によれば、政府は毎年、偽情報やプロパガンダのキャンペーンに数十億ドルを費やしている。

20年前の戦略とは異なり、より野心的で、国境を超えて影響力を拡大しようとしている。中国が国家機関を通じ、反政府的な個人や団体に対して居住地に関係なく嫌がらせをし、脅迫し、影響を与えようとしていることが米政府機関、議会公聴会、人権団体の資料で立証されている。

例えば、カナダの安全情報局(CSIS)は、同国の過去2回の総選挙に中国が介入したと主張している。スペインの人権団体セーフガード・ディフェンダーズは2022年の報告書で、中国が53カ国に少なくとも102カ所の「在外警察署」を設置していることを明らかにした。米司法省は、アメリカ国内で反体制派に対する嫌がらせや監視を行った中国人を相次いで起訴している。

中国政府によるこうした秘密裏の取り組みは、アメリカ、カナダ、ドイツやフランスといった民主主義諸国との関係をさらに悪化させている。

国内経済が低迷しても反体制派の取り締まりのコストは惜しまず

国内経済が低迷しているにもかかわらず、中国は抑圧と政治的検閲を優先し続けている。経済の問題は、中央と地方の政府支出に課題をもたらす。国務院(内閣に相当)は昨年3月、中央省庁の職員を5%削減すると発表した。同年の報道によれば、全国の地方政府が、政府予算の負担を懸念して請負業者を解約している。

地方政府の負債に新たなリスクがあるとも報じられている。これは、パンデミック下の「ゼロコロナ」政策が悪化させた長期的な問題だ。しかし中国政府は、きめ細かく的を絞った反体制派の取り締まりにかかるコストについては懸念していない。その成果が漠然としていても、だ。

Xでフォロワーの1割以上を失ったにもかかわらず、李は検閲されていない中国のコンテンツを望む人々のためにアカウントを運営し続けると誓った。

中国政府は無検閲の情報を求める個人を脅し、嫌がらせをしようとするかもしれない。だが、経済の減速と地政学的ジレンマの根本原因に対処しなければ、中国は近い将来、ソーシャルメディアと政治的弾圧にますます多くの資源を費やさなければならなくなるだろう。

From thediplomat.com

20241126issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

日産、タイ従業員1000人を削減・配置転換 生産集

ビジネス

ビットコインが10万ドルに迫る、トランプ次期米政権

ビジネス

シタデル創業者グリフィン氏、少数株売却に前向き I

ワールド

米SEC委員長が来年1月に退任へ 功績評価の一方で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中