地中海で「新石器時代の遺物」の歴史的発見か!?黒曜石の塊が見つかる
Navigating the Neolithic
WILD EUROPEーASCENT XMEDIA/GETTY IMAGES
<イタリアのカプリ島沖の海底で謎の黒曜石の塊が回収された。新石器時代に地中海を渡っていた舟の交易品だとすれば、考古学史上における屈指の大発見になる>
もしかすると、これは考古学の常識を覆す大発見かもしれない。
イタリア南部の観光名所カプリ島沖の海底で、火山ガラス(溶岩が急速に固まるとき特定の条件下で生成される天然ガラス)の塊が見つかった。
これが新石器時代の木造船の積み荷だった可能性が浮上している。
昨年10月、ナポリ湾を隔てて北にベスビオ火山を望むカプリ島の沖合で、ナポリ警察水中捜索隊のダイバーが、火山ガラスの一種である黒曜石の加工品らしきものを確認した。
イタリア政府のSABAP(考古学・美術・景観監督局)ナポリ大都市圏支部によると、発見場所はカプリ島南岸にある海食洞「グロッタ・ビアンカ(白の洞窟)」の近くで、水深は30~40メートルだ。
SABAPの記者発表によれば、この黒曜石の塊は新石器時代に地中海を渡っていた舟の積み荷の一部だった可能性がある。
なお、新石器時代とされる年代は地域によって異なる。
ヨーロッパ全体ではおよそ紀元前7000年から紀元前2000年までとされるが、カプリ島の浮かぶ地中海中央部では紀元前6000年から紀元前3500年くらいと考えられている。
今回見つかった黒曜石が新石器時代に難破した舟の積み荷だったとすれば、考古学上の大発見だと、難破船探査の専門誌「レックウオッチ」の編集長ショーン・キングズリーは本誌に語った。
ただし現時点では周辺で舟の残骸らしきものは見つかっておらず、積み荷と断定することはできないという。
木造船の発見が重要
「本当に新石器時代の難破船が見つかったら大騒ぎになる」と、キングズリーは言う。
「もしも相当量の積み荷や乗組員の遺品が出てくれば、それは水中考古学史上、屈指の大発見と言えるだろう。しかし残念ながら、まだ結論を出せる段階ではない」
黒曜石の加工品は「非常に興味深い発見」だが、と彼は付け加えた。
「現場周辺で他の新石器時代の人工物が見つからないことには話にならない。ほかにも何か沈んでいるものはあるか? 今回発見されたのは、たまたま嵐に巻き込まれたボートから投げ出された積み荷の一部なのか? それとも、カプリ島にある洞窟グロッタ・デッレ・フェルチで暮らしていた新石器時代の人々が何らかの祭事に用いた神々へのささげ物なのか?」
古代の航海技術に詳しい研究者サンドロ・バルッチは本誌の取材に対し、今回の発見は「もちろん非常に興味深い」としつつ、この黒曜石の加工品がカプリ島沖で難破した舟の積み荷である可能性は排除できないものの、そういう解釈を下すにはもっと慎重になるべきだと述べた。