地中海で「新石器時代の遺物」の歴史的発見か!?黒曜石の塊が見つかる
Navigating the Neolithic
そもそも、とバルッチは続けた。「新石器時代の遺物と断定するためには、専門の考古学者による綿密な調査が必要だ。発見からまだ日が浅いので、そうした調査が済んでいるとは思えない」
新石器時代にも航海の技術はあった。舟の構造はさまざまだったと考えられるが、まだ大型船を建造する技術はなく、いずれにせよ小さなボートだった。
「木でできたカヌーのようなものと考えればいい。オールをこいで推進力を得るため、内側に横方向の肋材(ろくざい)を入れて強化していただろう。さらに、簡単な帆を立てるための足場などもあったはずだ」と、キングズリーは言う。
ちなみに、新石器時代の地中海における海洋交通についての研究は、もっぱら積み荷の地域的分布などの間接証拠に基づいており、舟やその残骸といった直接証拠は皆無に等しい。
新石器時代の舟は木でできていたから腐食しやすく、よほどの好条件がそろわない限り、何千年もの時を超えて残ることはないからだ。
バルッチも「これまでに新石器時代の舟の残骸が地中海で発見された例はない」と指摘する。
「ヨーロッパの陸地や淡水域、湖や河川で新石器時代の木造船が見つかった例は過去にある。しかし、地中海は木材を食べる軟体動物のフナクイムシにとって快適な温度と塩分濃度であるため、どの時代のものであれ、木でできた舟は、いったん沈むとフナクイムシに食い尽くされてしまう」
「カプリ島の近くで沈んだ舟が海底の砂に埋まり、腐食を免れた状態であれば、木材の一部が残ることもあり得る。もしも一本の大きな木の幹をくり抜いて造られた丸木舟であれば、その残骸が残る可能性はある。しかし、その確率は極めて低い」
提供された写真で見る限り、発見現場の海底は砂地ではなく、岩や大きな石が転がっているようだ。「そうであれば(船体の発見は)願望や希望的観測の域を出ないだろう」と、キングズリーは言う。
昨年11月には、SABAPの海洋考古学者がナポリ警察のダイバーの協力を得て、発見された黒曜石の加工品の第1弾を回収している。
専門用語では「石核」と呼ばれるもので、大きさは28センチ×20センチ。重さは約8キロだ。何に使われたものかは分かっていないが、表面には明らかに人の手で彫刻や加工を施した痕跡がある。
種類によって異なるが、黒曜石はその名のとおり真っ黒だ。硬くて砕けやすく、砕けた部分は鋭くとがる。
古代人はこの特徴を利用して、何千年も前から黒曜石でナイフや矢尻など、切ったり突き刺したりする道具を作っていたことが知られている。