最新記事
2024米大統領選

2024年再選されたトランプは忠誠心重視の人事で権力掌握 「破滅シナリオ」に身構える同盟国

2023年12月21日(木)13時23分
ロイター
トランプ前米大統領

トランプ前米大統領(写真)が権力の座に返り咲けば、国防総省や国務省、中央情報局(CIA)の要職には自身に忠実な人物を起用し、自らの政策を1期目に比べてもっと自由に反映させる環境を整えようとするだろう。ネバダ州リノで17日撮影(2023年 ロイター/Carlos Barria)

トランプ前米大統領が権力の座に返り咲けば、国防総省や国務省、中央情報局(CIA)の要職には自身に忠実な人物を起用し、自らの政策を1期目に比べてもっと自由に反映させる環境を整えようとするだろう。トランプ氏の現側近や元側近、外交関係者ら20人近くに取材した結果、こうした道筋が見えてきた。

そうした人事を通じてトランプ氏は、ウクライナ戦争から中国との貿易問題に至るさまざまな分野で米国の政策を一変させ、1期目において外交政策の「足かせ」と見なしてきた政府機構内部にも思うがままに手を入れることができる、と取材した人々は話している。

2017―21年までの政権時代にトランプ氏は、傍目からは気まぐれで衝動的と受け取られるような自分の構想を、米国の外交安全分野のエスタブリッシュメントに認めさせることに苦労した。

トランプ氏はしばしば、要職者らに対して「仕事が遅い」「先送りする」「自分の方針と違う案を話題にする」などと不満を表明。実際に元国防長官のマーク・エスパー氏は回想録で、メキシコの麻薬犯罪組織にミサイル攻撃を行うというトランプ氏の提案に2回反対したと明かしている。

トランプ政権で4人目、そして最後の国家安全保障担当大統領補佐官を務めたロバート・オブライエン氏は「トランプ氏は、人事こそが政策なのだと認識するに至った。政権発足当初は、トランプ氏の政策案ではなく、おのれの政策案を実行することに興味がある人々が(周りに)多くいた」と語る。

「2期目」のトランプ氏は、忠実な人々を要職に配すれば、1期目にはできなかった外交政策をより迅速かつ効率的に遂行できるとみられている。

今もなおトランプ氏の最有力外交顧問の1人で、頻繁に連絡をしているオブライエン氏は、政権奪回時の優先課題の1つとして、国内総生産(GDP)の2%以上の防衛費を計上しない北大西洋条約機構(NATO)加盟国に貿易関税を課すことを挙げた。

1期目を目指した16年の選挙戦と異なり、トランプ氏は外交経験が豊富で信頼を寄せる人材には事欠かない、と4人の関係者は指摘する。具体的には政権最後の国家情報長官だったジョン・ラトクリフ氏や、元駐独大使リチャード・グレネル氏などだ。

これらの人々の政策観には幾分差があるとはいえ、トランプ氏が大統領を退任して以来一貫して同氏を明白に擁護し、NATOとウクライナ向け支援を巡る米国の過大な負担への懸念を表明している点でほぼ一致している。

キャリア
企業も働き手も幸せに...「期待以上のマッチング」を実現し続ける転職エージェントがしていること
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中