2024年再選されたトランプは忠誠心重視の人事で権力掌握 「破滅シナリオ」に身構える同盟国
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トランプ前米大統領(写真)が権力の座に返り咲けば、国防総省や国務省、中央情報局(CIA)の要職には自身に忠実な人物を起用し、自らの政策を1期目に比べてもっと自由に反映させる環境を整えようとするだろう。ネバダ州リノで17日撮影(2023年 ロイター/Carlos Barria)
トランプ前米大統領が権力の座に返り咲けば、国防総省や国務省、中央情報局(CIA)の要職には自身に忠実な人物を起用し、自らの政策を1期目に比べてもっと自由に反映させる環境を整えようとするだろう。トランプ氏の現側近や元側近、外交関係者ら20人近くに取材した結果、こうした道筋が見えてきた。
そうした人事を通じてトランプ氏は、ウクライナ戦争から中国との貿易問題に至るさまざまな分野で米国の政策を一変させ、1期目において外交政策の「足かせ」と見なしてきた政府機構内部にも思うがままに手を入れることができる、と取材した人々は話している。
2017―21年までの政権時代にトランプ氏は、傍目からは気まぐれで衝動的と受け取られるような自分の構想を、米国の外交安全分野のエスタブリッシュメントに認めさせることに苦労した。
トランプ氏はしばしば、要職者らに対して「仕事が遅い」「先送りする」「自分の方針と違う案を話題にする」などと不満を表明。実際に元国防長官のマーク・エスパー氏は回想録で、メキシコの麻薬犯罪組織にミサイル攻撃を行うというトランプ氏の提案に2回反対したと明かしている。
トランプ政権で4人目、そして最後の国家安全保障担当大統領補佐官を務めたロバート・オブライエン氏は「トランプ氏は、人事こそが政策なのだと認識するに至った。政権発足当初は、トランプ氏の政策案ではなく、おのれの政策案を実行することに興味がある人々が(周りに)多くいた」と語る。
「2期目」のトランプ氏は、忠実な人々を要職に配すれば、1期目にはできなかった外交政策をより迅速かつ効率的に遂行できるとみられている。
今もなおトランプ氏の最有力外交顧問の1人で、頻繁に連絡をしているオブライエン氏は、政権奪回時の優先課題の1つとして、国内総生産(GDP)の2%以上の防衛費を計上しない北大西洋条約機構(NATO)加盟国に貿易関税を課すことを挙げた。
1期目を目指した16年の選挙戦と異なり、トランプ氏は外交経験が豊富で信頼を寄せる人材には事欠かない、と4人の関係者は指摘する。具体的には政権最後の国家情報長官だったジョン・ラトクリフ氏や、元駐独大使リチャード・グレネル氏などだ。
これらの人々の政策観には幾分差があるとはいえ、トランプ氏が大統領を退任して以来一貫して同氏を明白に擁護し、NATOとウクライナ向け支援を巡る米国の過大な負担への懸念を表明している点でほぼ一致している。