「沈黙」する米潜水艦隊...本誌の調査報道が暴く「不十分すぎる」運用の実体
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だが、アメリカの攻撃型潜水艦を66隻に増やしても、継続的に運用できる状態にあるのは4分の1であり、依然として不足は補えない。より安価な通常動力型潜水艦を増やすのは一案かもしれないが、アジアやヨーロッパで作戦を展開するための長距離航続能力を確保できない。しかし軍事機密が絡んでくるせいか、技術的優位と実際の有用性の違いを専門家が指摘することはない。
「(現代の紛争では)あらゆる局面で対潜水艦戦が重要になる。より優れた探知力、航空機、水上艦、魚雷、自律航行ビークルなどで敵の潜水艦を発見・撃沈する能力が必要だ」と、先の退役海軍将校は語る。
戦争勃発でも出番は増えず
攻撃型潜水艦の運用上の制約を理解するために、22年の海軍の記録(各艦の航海記録や敵艦との「接触」報告など)を見てみよう。実際に配備された32隻がロシアや中国に近い海域までの往来に要した時間は、配備期間の約30%を占めた。前方展開中に潜航していた時間は37%だ。
配備回数にも波がある。22年の1年間を平均すると、ロシアに対しては6隻が配備されていた計算になるが、6月は3隻だけだった。中国に対しては平均7隻が配備されていたものの、1月は4隻だけだった。
ステルスモードでの巡視活動のピークは2月と6月と10月で、6、7隻が潜航して哨戒に当たる。米海軍の3つの潜水艦、シーウルフ、スクラントン、インディアナはそれぞれ半年以上続けて潜航していた。
月平均では、潜航中の潜水艦は太平洋・大西洋両艦隊を合わせて5隻足らずにすぎなかった。ロシアによるウクライナ侵攻開始後の昨年3月に潜航していた米海軍の攻撃型潜水艦は3隻のみ。2隻はヨーロッパ近海、1隻は太平洋にいた。
母港を出た攻撃型潜水艦はほぼ例外なく3つの海域で活動する。アジア近海(主として東・南シナ海)、北大西洋(ノルウェー海と北海周辺)、それに地中海だ。任務は敵とおぼしき艦船の追尾、船舶の護衛、抑止力の誇示、演習参加、情報収集、特殊作戦など多岐にわたる。
昨年3月にはアラスカ州北部のプルドー湾の北およそ170カイリの北極海に2隻の潜水艦が氷を割って浮上したが、これは恒例の演習で、ロシアを牽制する意味合いは薄かった。
昨年最も多くの海域に出動したのはバージニア州ノーフォークを母港とするオールバニだ。この原潜は米海軍の大半の潜水艦よりタイトな日程をこなしたが、それでも精力的に活動したとはお世辞にも言えない。昨年はまずイベリア半島の南端に位置する英領ジブラルタルに姿を現し、原潜の寄港に抗議するスペイン人環境保護活動家らのデモに迎えられた。