低ランク大学の卒業生ほど奨学金返済に苦慮している実態
奨学金の返済が若年層の重荷になっていることは確かだ tommy/iStock.
<入学偏差値が低い大学ほど、学生の貸与奨学金の利用率が高く、卒業生の返済滞納率も高くなる傾向が見られる>
少子化対策について議論されているが、結婚・出産をしたら奨学金の返済を減免しようという案が出ている。その是非はさておき、奨学金の返済が若者にとって重荷になっていることは確かだ。今では大学生の3人に1人が貸与奨学金を借り、数百万円の借金を負って社会に出る。彼らは重い「足かせ」をはめられていて、これが未婚化・少子化に影響していないはずがない。
ところで大学と言っても、様々なタイプがある。設置主体では国立、公立、私立に分けられ、数的に多い私立大学は、いわゆる入試難易度によって階層化されている。階層構造上の位置付け(ランク)によって学生の姿は異なり、上場企業への就職率も違うことはよく知られている。
学生の奨学金利用率にも差があり、誰もが知っている有名私立大学(偏差値70以上)では、2020年度の学部学生のうち貸与奨学金を使っているのは7%。これに対して、筆者がかつて教えていた某私立大学(偏差値40台)では40%。大きな差だ。
大学の入試難易度と奨学金利用率の関連はどうなっているのか。<図1>は横軸に入試偏差値、縦軸に貸与奨学金利用率をとった座標上に、首都圏(1都3県)の190の私立大学を配置したグラフだ。偏差値は各学部の数値の平均値で、ベネッセの「マナビジョン」というウェブサイトから得た。奨学金利用率は、学部学生のうち奨学金の貸与を受けている者のパーセンテージで、日本学生支援機構ウェブサイトのデータベースから得た(URLは巻末を参照)。
190の私大の貸与奨学金利用率は、4%から62%まで広く分布していて、偏差値と絡めると右下がりの傾向がある。入試偏差値が低い大学ほど、学生の貸与奨学金利用率が高い。相関係数は-0.6802で、統計的に有意と判断される。
各大学の学費よりも、入ってくる学生の家庭環境の違いが大きい。偏差値が低い大学では、家計に余裕のない学生が多い。筆者はこの手の大学で10年ほど教えたが、400円ほどの定食などにも手が出ないのか、昼間でも学食は空いていた。奨学金を借りている学生も多く、親には全く頼れないと、無利子と有利子(満額)を併用して借りている学生もいた。
月の借り入れは16万円、4年間の総額は768万円。卒業後、月2万円のペースで返済とすると、完済には32年間かかる。給与のいい大企業への就職率は低いことから、辛い思いをして返済している人が多いだろう。結婚や出産どころではない。なかには、返済の重荷に耐えられず、生活が破綻してしまうケースもあるかと思う。