200人以上のアメリカ人も不当拘束、中国政府が標的にしているのは誰か?
‘PRAYING FOR A MIRACLE’
カリフォルニア州オレンジ郡の牧師デービッド・リン(68)は、1990年代に中国の教会の活動を支援するため中国に渡っていたが、06年に北京で自宅軟禁状態に置かれた。そして、その3年後に詐欺罪で終身刑を言い渡された。娘のアリス(40)は、大学を卒業して以降、父親に一度も会っていない。
刑務所で歯を5本失った
リンも、中国で不当に拘束されていると米国務省が考えているアメリカ国民の1人だ。「父と電話で話すことができるのは、月に2回、5分間だけ」だと、アリスは言う。リンが拘束されて既に16年近いが、家族がその事実を公表したのは2019年になってからだった。獄中のリンの安全と健康に害が及ぶのではないかと心配だったのだ。
「18年末に、父が自分の聖書をアメリカに送ってきた。これは、砂漠の真ん中にいる人物がたった1本しか持っていない飲用水のボトルを手放すような異常事態だと思う」と、アリスは言う。
「確実に分かっているのは、獄中で暮らす間に、父が歯を少なくとも5本失ったということ。おそらく、栄養と衛生面の劣悪な状態が原因だと思う」
国連人権理事会の恣意的拘禁作業部会は、中国で国際法違反の形で身柄拘束されているアメリカ国民として2人の人物を認定している。その1人はカイ・リー。そして、もう1人がテキサス州ヒューストンのマーク・スワイダンだ。スワイダンは12年に些細な薬物関連の容疑で逮捕されて、19年に執行猶予付きの死刑判決を受けた。
地元テキサス州選出のテッド・クルーズ共和党上院議員は先頃、上院の議場で、スワイダンの拘束が続いている状況を「甚だしい不正義」と指摘。「活用できる全ての手段を駆使して解放を実現する」ようバイデン政権に要求した。
ヘンリー・ツァイ(61)の娘キャロライン(23)は、父親の状況について調査してほしいと、前出の国連作業部会に求めてきた。カリフォルニア州の実業家であるツァイは、17年に出張で中国を訪れた際、日程を終えてアメリカに帰国しようとしたときに出国を禁止された。それ以来、中国から出国することを許されないまま5年以上が過ぎた。これはおそらく史上最長の期間だ。