200人以上のアメリカ人も不当拘束、中国政府が標的にしているのは誰か?
‘PRAYING FOR A MIRACLE’
MYKHAILO POLENOKーEYEEM/GETTY IMAGES
<「刑務所で歯を5本失った...」自国民だけでなく、他国民も不当に拘束する中国。透明性を欠いた刑事司法制度に翻弄されたまま、月日だけが過ぎていく>
中国で何年も捕らわれの身になっているアメリカ国民とその家族の希望は、またしても打ち砕かれた。
きっかけは、アメリカ本土の上空で中国の偵察気球が確認されたことだった。この問題を受けて、米政府は、2月上旬に予定されていたアントニー・ブリンケン国務長官の中国訪問と中国側高官との会談を無期限に延期せざるを得なくなった。家族が中国で自由を奪われている人たちは、ブリンケンの訪中が問題解決につながることを期待していた。
中国で不当に拘束されているアメリカ国民は200人を上回るが、正確な人数は分からないと、中国でリスクにさらされているアメリカ人被拘束者の処遇改善に取り組むサンフランシスコの人権団体「対話財団」の創設者ジョン・カムは説明する。
中国の刑務所や収容所で拘束されていたり、自宅軟禁状態にあったり、出国を禁じられていたりするアメリカ国民は、中国の透明性を欠く刑事司法制度に翻弄されている。ほとんどの場合は、法律の専門家による支援を受けられず、祖国の家族と連絡を取る機会も大幅に制約されている。
「私に言わせれば、このように中国で抑圧的な扱いを受けているアメリカ国民は政治犯だ。投獄などの処遇は、アメリカと中国の政治的関係が悪いことと関係があるのだから」と、カムは本誌に語っている。
こうした人たちが中国でかけられている嫌疑は全く妥当性を欠くと、家族は主張する。
ニューヨーク州ロングアイランドの実業家カイ・リー(60)は、2016年に上海を訪ねたときに逮捕された。その後、家族と連絡を取れない状態になり、18年に非公開の裁判でスパイ罪により10年の刑を言い渡された。しかし弁護士によれば、リーのスパイ罪で問題にされた「国家機密」は、ネット上で自由にアクセスできるものだという。
米国務省は、リーを中国当局により不当に拘束されているアメリカ国民の1人と考えている。「つまり、父に対する刑事告発が政治的動機によるものだったと、アメリカ政府も判断しているということだ」と、リーの息子ハリソン(25)は本誌に語っている。
収監されているリーがアメリカの家族と連絡を取れる機会は、月1度のわずか数分間の電話だけだ。しかも、新型コロナのパンデミックが始まると、刑務所は服役者との面会を停止した。そのため、リーの現在の状況を把握し、法的権利が保障されているかどうかを確認することが難しくなっている。
「この3年間、上海の米領事館職員が父と面会することは許されていない」と、ハリソンは言う。