最新記事

国家首脳

ロシア、中国、イラン...完璧なはずの独裁政権が、無視できなくなった「革命」の可能性

UNSAFE DICTATORSHIPS?

2023年2月16日(木)19時16分
フレッド・カプラン(スレート誌コラムニスト)
プーチン大統領、ハメネイ最高指導者、習近平国家主席

(左から)ロシアのプーチン、イランのハメネイ師、中国の習に国民の圧力が強まっている PHOTO ILLUSTRATION BY SLATE. PHOTOS BY AFPーGETTY IMAGESーSLATE, KEVIN FRAYERーGETTY IMAGESーSLATE, MAJIDーGETTY IMAGESーSLATE, AND ALEXANDR DEMYANCHUKーSPUTNIKーAFPーGETTY IMAGESーSLATE

<強権的な指導者たちは国民の圧力をかわす完璧な体制を築いたが、いよいよそこにも亀裂が生じ始めた>

中国では新型コロナウイルス対策への抗議デモが広がり、イランでは女性の権利を訴える反乱が起きた。そしてロシアでは、反戦運動や破壊工作と思われる活動が相次いでいる。果たしてこれは、世界で最も抑圧的な3つの国で、革命や本格的な改革が起こる兆しなのか。

20世紀に、これらの国は何度も革命を経験した。イランでは1906年に立憲革命が、79年にはイスラム革命が勃発。中国では11年に辛亥革命が起き、49年には共産党が中華人民共和国を樹立。ロシアでは05年に第1次革命、17年に10月革命が起き、91年にはソ連が崩壊した。

いずれの大変革も当時は衝撃的だった。今、これらの国で革命が起こる可能性は小さいようにみえるが、起こり得ないとは言い切れない。この3カ国では、革命を目指す者も今の秩序を守りたい者も、誰もがそのことを知っている。その共通認識があるからこそ、緊張が高まっている。

それでも通常は、緊張が沸点に達することはない。急進的な変革が成功する前提条件について、社会学者や政治学者は1つの共通の結論を導き出している。必要なのは3つの要素──組織、戦略、そしてカリスマ的指導者だ。

「イラン、中国、ロシアの動きはその条件に当てはまらない」と、スタンフォード大学フーバー研究所のラリー・ダイアモンド上級研究員は言う。

検閲に対する抗議の象徴として白紙を掲げた中国のデモ参加者も、髪を覆うヒジャブを着用せずに「アヤトラ(アリ・ハメネイ最高指導者)打倒!」と叫ぶイランの女性も、投獄を恐れないロシアの反戦活動家たちも、みな驚くほど勇敢だ。だが単に勇敢なだけでは政権を倒し、国の政治を変えることはできない。

アブリル・ヘインズ米国家情報長官は最近、NBCニュースのインタビューで、イランの当局者はデモを「差し迫った脅威」とは捉えていないと指摘。一方で、長期的に見れば、イラン政府は苦境に立たされる恐れがあるとの見方を示した。

政府への反発が強まり、政権内で分裂が生じ、経済も悪化の一途をたどっているためだ。さらに都市部には、西側のニュースや文化に通じ、本格的な革命が起これば参加もいとわない若者たちがたくさんいる。

革命はどんな場合でも、起こるときには起こる。米ノースカロライナ大学のチャールズ・カーズマン教授(社会学)は「革命は自然発生的な運動から生まれることが少なくない」と言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国副首相が米財務長官と会談、対中関税に懸念 対話

ビジネス

アングル:債券市場に安心感、QT減速観測と財務長官

ビジネス

米中古住宅販売、1月は4.9%減の408万戸 4カ

ワールド

米・ウクライナ、鉱物協定巡り協議継続か 米高官は署
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中