最新記事

国家首脳

ロシア、中国、イラン...完璧なはずの独裁政権が、無視できなくなった「革命」の可能性

UNSAFE DICTATORSHIPS?

2023年2月16日(木)19時16分
フレッド・カプラン(スレート誌コラムニスト)

230117p26_DSK_04.jpg

カリスマ的支配を確立したレーニン KEYSTONE/GETTY IMAGES

カーズマンによれば、イランで王制打倒運動が広がり始めた79年初め、ホメイニ師は「一定の聖職者層以外には存在をほとんど知られておらず」、指導者になったのは「革命が終焉に向かった頃」だった。

同様に、ロシアで1917年初めにストや暴動が活発化するなかで、ウラジーミル・レーニン率いるボリシェビキは少数派にすぎなかった。91年の8月革命もソ連崩壊によって本格化しており、ロシア共和国大統領だったボリス・エリツィンが新たな民主的指導者になるのは終盤になってからだ。

ホメイニ師、レーニン、エリツィンは革命が勃発する状況に乗じて、自らの望む方向に舵を切ることにたけていた。毛沢東もフィデル・カストロも、ナポレオンもそうだった。

革命は組織や戦略やカリスマ的指導者が欠けても起こり得るが、この3つの要素の少なくとも一部がなければ成功はほとんど望めない。権威主義的な政府──とりわけ革命によって誕生したイラン、ロシア、中国の政治的指導者は、この事実を知っている。彼らはデモを主導する可能性のあるリーダーを巧みに特定し、活動を妨げたり逮捕したりしてきた。

ゴルバチョフが遺した教訓

例えばロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、反体制指導者のアレクセイ・ナワリヌイをいいかげんな罪状で拘束した。ウクライナ侵攻直後には、反戦活動家を大々的に弾圧した。イランの当局は1万5000人以上のデモ参加者を逮捕し、そのうち少なくとも20人に死刑を宣告。ヒジャブの廃止を唱えただけでなく、現体制の転覆を目指す指導者たちを公開処刑した。

ロシア、イラン、中国の支配者は、民衆の圧力をかわす完璧なシステムを構築した。プーチンは帝政ロシア以来の独裁体制を築き、メディアを独占。批判勢力に暗殺を企て、破産に追い込んできた。

イランでは政権を維持する役割を持つイラン革命防衛隊が、大半の省庁と経済の中核部門を掌握。中国では習近平(シー・チンピン)国家主席の下、共産党が毛沢東の国家統制思想を復活させ、歴代の指導者である鄧小平や江沢民が行った市場改革の大半を覆した。

だが社会的・政治的・経済的・生態学的な圧力は、政権がいかに阻止しようとしても増大することが多い。次に何が起こるのか──政権が権力を強化するか、それとも崩壊し始めるかは圧力にどう対応するかによる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中