裁判所まである!中国の非合法「海外警察署」の実態を暴く
XI’S POLICE STATE–IN THE U.S.
人口700万人以上の南通市では、地元の公安庁がITを駆使した「警察と在外華僑の情報操作プラットフォーム」を導入した。そして「公安業務を国際化し、グローバルな協力の即応態勢を整える」とうたい、2022年2月に始まったロシアの侵攻でウクライナから避難した南通市民132人を支援したとしている。
こうした地方都市の警察本部は、外国に置いた代理組織を習近平の主導する「一帯一路」政策の一環と位置付けてもいる。
中国の在外警察署があるのはアメリカだけではない。中国メディアによると、ヨーロッパだけでも数十カ所はある。一番古いのは、中国人移民の多いイタリア北部のプラート市で、2005年頃からある。
セーフガード・ディフェンダーズは、昨年9月の報告でヨーロッパにある中国警察の拠点を54カ所としていたが、さらに48カ所を確認したとし、「ヨーロッパ数カ国で、中国警察がイタリアをはじめ現地の警察と合同で活動する試験的な取り組みを行い、在外警察を強化する動きがある」と指摘。
前回の報告以降、少なくとも13カ国で中国警察に関する調査が開始されたとしている。
中国側の公安当局者も、頻繁にアメリカを訪れている。
中国東北部にある遼寧省瀋陽市の当局は2017年に、非営利団体のロサンゼルス瀋陽商工会議所内に非公式の「工作連絡所」を開設した。商工会議所側は「定期的な情報交換」を円滑に進めるためだと説明している。
だが同連絡所は統一戦線工作部に属し、「友好的な商工会議所」と位置付けられている。
さらに、中国の在外裁判所もある。浙江省温州市鹿成裁判所が発表した2016年の年次報告書に、興味深い記述が見つかった。同裁判所がニューヨークとロサンゼルスで「在外調停所」を運営し、「華僑が関わる事案を効率的に調停している」という。
NYにも中国の在外裁判所が
浙江省のメディア、温州網によれば、同裁判所が初めて「連絡員」を任命したのは2014年。それが在ニューヨーク温州商工会議所の潘志欽(パン・チーチン)事務局長と林家驥(リン・チアイー)会長だった。
その2年後、同裁判所はロサンゼルスにも窓口を設置し、アメリカ中西部の案件を管轄するようになったとしている。ただし、こちらの窓口の所在は明らかにされていない。
温州網によれば、鹿成裁判所はニューヨーク在住の女性に、中国本土にいる夫からの離婚届をオンラインで送達し、わずか30分で処理を終え、夫が子供の養育権を得たと報じている。これは民事の案件だが、人民日報の昨年4月の報道によると、海外連絡員は「犯罪解決の担当機関」を通じ、「華僑の特徴を生かして」刑事事件も扱っている。
同紙によれば、浙江省青田県の検察は「海外連絡員、仲介者、温厚な華僑のリーダーを率先して活用」し、トラブルを解決しているという。