玉ネギ高騰のフィリピン、食料安全保障でも中国に首を差し出すか
かつてはマニラの市場に過積載された玉ねぎが運ばれる姿が見られたが…… Romeo Ranoco / REUTERS
<自ら農業大臣を兼務するマルコスだが、困ったときには中国に依存>
ウクライナ戦争の影響を受けて昨年から世界的な物価高となっている。フィリピンでも食料品、特に農産物の値上げが続いているが、なかでも玉ネギは史上最高の価格となり、労働者の最低賃金を上回るなど異常な高騰となっている。原因には玉ネギの生産地が相次ぐ大規模台風の打撃を受けて収穫が大幅に減少したことが背景にあるとみられている。
フィリピン料理で多用される玉ネギ(赤玉ネギ、白玉ネギ)の高騰は一般市民の台所や飲食業界を直撃しており、玉ネギを販売するスーパーなどの商店や八百屋には少しでも安い玉ネギを購入しようとする市民の長蛇の列ができている。
一方では玉ネギを中心とする野菜などの農産物の不足を反映して外国から密輸するケースも出始め、税関当局は監視、摘発を強化している。
マルコス大統領は自ら農業大臣を兼務するなど農産物の自給には強い関心をもっている。そのため今回の税関が押収した玉ネギや白ネギなどを野菜不足解消の対処策の一環として市場で販売する可能性を探っているとされ、野菜不足による価格高騰が極めて深刻な問題であることを裏付けている。
鶏肉、最低賃金より高価な玉ネギ
フィリピンの赤玉ネギは2021年で平均1キログラム90〜120ペソ(約210〜280円)だったが、2022年10月頃にはそれが120〜170ペソ(約400円)に上昇した。そして2022年末から2023年の年始にかけて600ペソ(約1400円)にまで跳ね上がり高騰しているのだ。
この600ペソという価格は鶏肉1キログラムの220ベソ(約510円)よりはるかに高く、豚肉や牛肉よりも25%から50%割高の値段だという。
さらにマニラ首都圏で働く非農業従事者1日の最低賃金570ペソ(約1330円、2022年6月基準)よりも高額になってしまい、おそらく世界で最も値が張る玉ネギになっている可能性があると地元紙などは伝えて危機感を表している。
野菜類の緊急輸入で価格抑制へ
こうした事態にフィリピン農務省は国内の供給の減少を食い止め、価格上昇の動きを抑制するため3月までに2万2000トンの玉ネギを含めた野菜類の輸入が必要になると試算している。
現地の報道などでは1月末までに約2万1000トンの野菜類が輸入されるというが、フィリピンは毎月約2万トンの野菜を全国で消費しているとされ、不足や価格高騰が解消されるかどうか効果を疑問視する声も出ている。