最新記事

トレンド

スマホゲームの時代に大統領までカチカチ インドネシアでアメリカンクラッカーが大流行

2023年1月14日(土)19時15分
大塚智彦
アメリカンクラッカーに挑戦するインドネシアのジョコ大統領

ジョコ大統領まで挑戦するほどアメリカンクラッカーはブームに。Kompas.com / YouTube

<昔懐かしいあのおもちゃが突如として大流行。その訳は?>

インドネシアでアメリカン・クラッカーが大流行している。特に子供の間では大人気で首都ジャカルタ市内の大型ショッピングモールなどではあちらこちらからアメリカン・クラッカーを打ち鳴らす音が響き渡る状況だ。流行は全国的な広がりをみせているが、一方で複数の州では小学校への持ち込みを禁止するところも出ている。

70年代に流行したアメリカン・クラッカー

インドネシア語で「Lato-Lato(ラトラト)」と呼ばれるアメリカン・クラッカーはアメリカ生まれのおもちゃ。長さ約20センチの1本の紐の両端に硬質プラスチックのボールがあり、紐を片手の指に挟み上下することで2個のボールをぶつけて音を出すという簡単な仕組みだ。上級者になるとボールを手の上下で打ち合わせて軽快なカチカチという連続音を出すことができる。

日本でも「カチカチ・ボール」と呼ばれるアメリカン・クラッカーが1971年に売り出されたが音がうるさいことや遊んでいる間にボールが外れたり破損してケガをする事例が報告されたこともあり、あっという間に流行が下火になった経緯がある。元祖の米国でも子供の負傷事例が報告されたことなどから1970年代に「アメリカン・クラッカー」は禁止されているという。

中東のエジプトでも2017年ごろに禁止されたというが、その理由がふるっていて2つのボールが当時のアブドールファッターフ・アッ・シシ大統領の「睾丸」を連想させる「シシ・ボール」と呼ばれ大統領批判だと当局が判断して禁止にして販売業者は逮捕され、エジプト教育省は教師に対して児童から「アメリカン・クラッカー」の没収を命じたという。

有名俳優、知事、大統領も動画をシェア

インドネシアでは1980年代に「テック・テック」と呼ばれる同じような遊具が流行ったが一時的なものだったという。今回のブームはきっかけこそ定かではないが、有名な俳優が「ラトラト」を実演して技を披露する動画をSNS上にアップしたほか、ジョコ・ウィドド大統領、リドワン・カミル西ジャワ州知事が興じる様子も拡散されたことがきっかけになったと見られ、2022年の年末から2023年の年始にかけて「ラトラト」はインドネシアでにわかに売れ出したという。

玩具店やネット販売で簡単に購入できることも爆発的人気の背景にあるとみられ、ネット通販の「トコペディア」ではこの年末年始年の「ラトラト」の売り上げが通常の57倍になったと地元メディアは伝えている。またジャカルタ市内の玩具店の中には年末年始の一カ月で売り上げが通常約10万ルピア(約600円)以下の売り上げが100万ルピア(約6000円)に達したところもあると伝えている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    注目を集めた「ロサンゼルス山火事」映像...空に広が…
  • 10
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中