「あなただけではない...」不安症、親の育て方が大きく関係──治療の最前線
THE ANXIETY EPIDEMIC
「注意バイアス修正」も期待の治療法だ。不安の強い人々は、恐れや心配を引き起こすものをじっと見つめてしまう傾向があることが研究によって明らかになっている。例えばコンピューター画面の中央を見つめているよう指示されていても、画面の端に怒っている人や怪しい人物が一瞬映し出されると、不安症の人はすぐにそちらに目を奪われてしまうのだ。だが、そうした画像を無視する訓練をすると、現実の生活でも不安が軽減されるという。
「注意バイアス修正は、非常に説得力があり非常に充実した神経科学の文献が基になっている」とNIMHのパインは言う。「臨床的にも効果は証明されていると考える人もいるが、私は言い切る気にはなれない。時期尚早だ。だが私がやってきた仕事の中では、最も期待が持てる」
もちろん、どんなセラピーであれ合わない人はいる。そういう患者に、またはセラピーと並行して、治療に投薬が組み込まれることは多い。
アルプラゾラムやクロナゼパム、ジアゼパムといったベンゾジアゼピン系の薬は、不安を治すために開発され、実際に抗不安薬として売られているが、最近ではあまり好まれない。乱用や依存を引き起こしやすい上、エクスポージャーのエクササイズの邪魔をしかねないからだ。
「ベンゾジアゼピン系の薬を検討するのは勧められない」とテーツは言う。「通常なら不安に陥るような状況に直面しているのに、薬で心を穏やかにしてしまっては意味がない」
パインの意見はやや異なる。「ひどい不安に襲われている人には役に立つかもしれない。家を出て仕事に行くことすらできないような人にとっては」と彼は言う。「だが(ベンゾジアゼピン系の投薬は)間違いなく第2選択の治療薬だ。なぜなら、一般的に副作用が抗鬱剤より目立つからだ」
皮肉なことに、多くの抗鬱剤は、鬱そのものよりも不安に高い効果を示している。おまけに抗不安薬であるはずのベンゾジアゼピン系よりも不安を軽減する効果が高い。パインによれば、セルトラリン塩酸塩やフルボキサミンマレイン酸塩といった抗鬱剤は、不安症の標準的な治療薬と考えられているという。
不安症治療をめぐる新たな発見の中でも驚きを持って迎えられたのが、大麻には効果がないばかりか、状態を悪くする恐れもあるらしいという研究結果だ。「不安症治療に大麻が効果的であることを示す論文はない」と、ハーバード大学医学大学院のジョディ・ギルマン准教授は言う。