食品価格が前年比45%アップ 東欧各国、クリスマスの晩餐へ必死の節約
東欧地域の消費者は、クリスマスに伝統的な食材をテーブルに並べるために最大限の節約を強いられている。写真はブダペストの市場で3日撮影(2022年 ロイター/Marton Monus)
東欧地域の消費者は、クリスマスに伝統的な食材をテーブルに並べるために最大限の節約を強いられている。特にハンガリーやバルト諸国で食品価格が跳ね上がり、その上昇ペースは欧州連合(EU)全体をはるかに上回っているからだ。
EU統計局によると、ハンガリーの10月の食品価格は前年比45.2%上昇。東欧のEU加盟10カ国の上昇率も20%を超える。リトアニアとラトビアはそれぞれ33.3%と30%だった。
一部の国では物価全般はピークを付けた可能性があるものの、食品価格はなお力強く上昇を続けており、生活費をさらに圧迫している。これらの国の中央銀行は、経済が急減速し始めているにもかかわらず、政策金利を高水準に維持せざるを得ない。
複数の専門家の話では、食品価格はエネルギーや肥料の高騰という世界的要因だけでなく、食品産業の低い生産性や輸入依存度の高さ、労働需給ひっ迫に伴う賃金の大幅上昇という東欧固有の事情によって押し上げられている面もある。
ハンガリーの場合、今年は深刻な干ばつのためにトウモロコシや小麦の収穫が激減し、家畜飼料の価格が一気に上昇したばかりか、通貨フォリントの下落で輸入物価も上がるという「弱り目にたたり目」の状況となった。
東部ティサエスラールで国宝に指定されている「マンガリッツァ豚」2000頭余りを飼育しているラヨス・カンデルさん一家にもその影響が及んでいる。この養豚場は従来、トウモロコシと小麦を自家栽培して飼料に回してきたが、今年は干ばつのせいで飼料の購入を余儀なくされた。ところがトウモロコシと秋小麦の価格は、昨年の2倍近かったという。
カンデルさんは「飼料を買わないといけないので来年はとても厳しい局面になる」と語り、電気料金や賃金、獣医の診察代もかさんでいると付け加えた。
例えば養豚場が支払う電気料金を見ると、年末までの契約はキロワット時(KWh)当たり29フォリントだが、その後は同138フォリントに上がる見込み。豚のワクチン接種料金は年間で450万フォリントと3倍に膨らんだ。
カンデルさんは豚の卸値をおよそ20─25%引き上げたとはいえ、これ以上コストが増大しても価格に転嫁するのは難しくなると話す。「業者側がある程度コストを負担して今の状況を乗り切るしかない。本音を言えばキロ当たり2000フォリントにしたい。(しかし)それでは誰も買ってくれない」と打ち明けた。