最新記事

インフレ

食品価格が前年比45%アップ 東欧各国、クリスマスの晩餐へ必死の節約 

2022年12月11日(日)11時00分

ハンガリーの11月消費者物価指数(CPI)は8日に発表される予定。こうした食品価格が主導する形で前年比上昇率は22.2%に加速すると見込まれている。燃料価格上限の撤廃もあり、今後さらに上振れる流れだ。

チェコの10月CPIは前年比上昇率が15.1%に鈍化したものの、食品は値上がりした。ポーランドでも食品とアルコール以外の飲料は11月の前年比上昇率が22.3%と、CPI全体の17.4%を上回った。

ハンガリー国立銀行(中央銀行)のマトルチ総裁は5日、来年の物価上昇率は平均15-18%で推移し、上昇分の半分以上は食品が占めるとの見通しを示した。

マトルチ氏は「ハンガリーの食品産業は受け入れがたいほどの低い生産性で操業しているし、競争がない。輸入比率は高く、投入されるエネルギー費用は増大している」と指摘した。

今年は貧しいクリスマスに?

物価高騰で消費は冷え込み始めた。

ハンガリーの10月の食品売上高は5.6%減少。食肉・魚介が前年比34%、パンが同80%も値上がりし、各家庭が節約モードに入ったためだ。チェコでは砂糖が105%、ポーランドでは小麦が45.4%も上がっている。

ブダペストの市場では75歳のエバ・ラーツさんが、今年はクリスマス用の鯉を買う余裕がないと嘆いていた。ハンガリーでは昔から鯉料理でクリスマスを祝う習慣がある。

自身と夫の2人で毎月20万フォリント(507.74ドル)の年金を頼りに生活しているラーツさんは「私たちの年金はわずかで、まず光熱費と薬代を払う必要がある。だからいつもより貧しいクリスマスになるだろう」と語り、一体いつまでこんな境遇が続くのかと絶望的な気持ちになると付け加えた。

ある調査によると、ポーランドの人々が今年のクリスマスに使う費用は平均で1259ズロチ(281ドル)と1年前より307ズロチ増えた。だが回答者のほぼ半数は、節約のためにより安い商品を買うと述べた。

ハンガリーのCPI前年比上昇率は来年前半になって減速するが、そのペースは非常にゆっくりにとどまる見通し。ゴールドマン・サックスは「ハンガリーで物価情勢が改善していることを示す持続的な兆候はまだ見えていない」と分析した。

(Krisztina Than記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

エヌビディア、米エネ省向けスパコン構築へ AIチッ

ビジネス

トランプ・メディア、予測市場事業に参入へ

ビジネス

SKハイニックス、第3四半期営業利益は過去最高 A

ビジネス

日産、メキシコ合弁工場での車両生産を11月で終了=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 2
    コレがなければ「進次郎が首相」?...高市早苗を総理に押し上げた「2つの要因」、流れを変えたカーク「参政党演説」
  • 3
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大ショック...ネットでは「ラッキーでは?」の声
  • 4
    楽器演奏が「脳の健康」を保つ...高齢期の記憶力維持…
  • 5
    「ランナーズハイ」から覚めたイスラエルが直面する…
  • 6
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 7
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 8
    「何これ?...」家の天井から生えてきた「奇妙な塊」…
  • 9
    「死んだゴキブリの上に...」新居に引っ越してきた住…
  • 10
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中