文革で学習能力が欠如する習近平ら「一強」体制が、うかうかできない理由とは?
Finally, Red Guards Over China
文革で失われた学習能力
習自身を含め、今の最高指導部(政治局常務委員会)を構成する7人には重大な欠陥がある。政策の立案と執行に関して、誰にもまともな実績がないのだ。
なぜか。問題の根は深い。7人中で最年長の習は1953年生まれで、最年少の丁薛祥(ティン・シュエシアン)は1962年生まれ。つまり全員が、あの文化大革命の時代に学齢期を迎えていた。
中国の初等教育にダメージを与えたのは、文化大革命の時代に重なり合って発生した4つの出来事だった。
小中学生も巻き込んだ紅衛兵運動、2年間の学校閉鎖(再開後も授業とは名ばかりの毛沢東式カリキュラムが採用された)、教員や知識人を徹底して攻撃した「階級隊列の整頓」キャンペーン(過激化・非人間化した生徒から辱めや拷問を受け、多くの死者や自殺者を出した)、そして都会の暮らしで堕落した一部の紅衛兵を農村に追いやり、重労働に従事させた知識青年の下放運動である。
新しい指導部を構成する政治局常務委員7人の全員が、こうした異様な運動に巻き込まれ、その一部または全部に関与していた。
1970年代の後半には、こうした世代の多くが(ほとんど読み書きもできないのに)「工農兵学員」として高等教育機関に入学できた。しかし、失われた学習能力はほとんど回復されなかった。
新しい政治局常務委員7人のうち、4人(習近平、蔡奇〔ツァイ・チー〕、趙楽際〔チャオ・ローチー〕、王滬寧〔ワン・フーニン〕)はそうした工農兵学員だった。習が演説の原稿を読み上げるとき、よく単語の発音を間違えるのはそのせいだ。中国人なら、みんな承知している。
読み書きの能力だけでなく、人格形成にも影響があった。この世代は思春期を政治に翻弄された。まともな教育を受けて社会へ出る準備をすべき時期に、「文化大革命」の名の下で残酷さとずる賢さ、道徳的規範の完全無視をたたき込まれた。
だが現在の常務委員の7人は知識や能力の不足を、意志の強さと目的のためなら手段を選ばぬブルドーザー精神で十分に補ってきた。
その最たる例が蔡奇だ。この人物は北京市の党委書記を務めていたとき、出稼ぎ労働者らを強引に排除する「清理低端人口事件」を引き起こした張本人だ。
2017年11月、貧しい出稼ぎ労働者(役所言葉では「低端人口」と呼ばれる)が暮らす北京のスラム街で悲惨な火事が発生したときのこと。首都にそんなスラム街があること自体が大きな問題とされた。
しかし蔡は、わずか40日で問題を一気に解決した。補償も引っ越し先の手配もせずにスラム街の電気や水道を止め、わずかな所持品を冷たい路上に投げ捨てて、住民を強制的に立ち退かせたのだ。
人民に「奉仕」するはずの中国共産党の幹部が、どうしてこのような暴挙を命じたのだろう。