文革で学習能力が欠如する習近平ら「一強」体制が、うかうかできない理由とは?
Finally, Red Guards Over China
中国政治の3勢力とは
共青団派は今度の党大会で「党と国家の指導者(党和国家領導人)」と呼ばれる指導部から締め出された。とはいえ、70人ほどで占める最高幹部の役職(100前後)を除けば、無数にある党や官庁の要職を埋めるのは、結局のところ共青団系の人間になる。習は彼らの復権を阻止したいだろうが、そうすると国家機関のシステムが回らなくなる。
一方で、元総書記の江沢民(チアン・ツォーミン)に連なる一派もまだ消滅してはいない。この国に13年も君臨した江は、毛沢東を除けば誰よりも(現時点では習近平よりも)長く総書記として党トップの座にあった。そして鄧小平が始めた改革・開放路線を忠実に引き継いでいた。
そんな江沢民派の人材は党や政府、市場(といっても実態は縁故資本主義だが)にたくさん残っている。習のいわゆる「反腐敗闘争」で党や政府の要職からは排除されたが、国有企業を除く経済界では今も幅を利かしている。
つまり、中国では四半世紀前から、異質な3つの政治勢力が共存している。政権の中枢を占める時の権力者と、それ以外の機関の多くを牛耳る共青団派、そして国有企業以外の経済部門で影響力を持つ江沢民派だ。
中国は一党独裁の国家だが、今までは指導部内にもこの3つの勢力が混在し、一定のバランスを保ってきた。互いに牽制し合うから、党内対立も抑制されてきた。ところが習はひたすら自派の勢力拡大を追求し、指導部内で権力を集中させ、この微妙なバランスを崩してしまった。
西側諸国は、毛沢東なみの独裁者になろうとする習近平を警戒している。だが欧米諸国の大統領や首相も、自身の政権からは徹底して政敵を排除している。つまり権力の独占自体が悪いのではない。
逆説的に聞こえるかもしれないが、一党独裁の国家でこそ、支配政党内部での派閥争いが政権の不安定要因となる。今の中国では、習近平派で固めた党中央と、締め出された共青団派や江沢民派の熾烈な争いが始まっている。
第20回党大会で習が「全勝」したからといって、党内の権力闘争が沈静化するとみるのは間違いだ。今回の人事で敵と味方がはっきり見えた。だから、これからが本格的な戦いになる。果たして習は勝てるだろうか。