習近平に仕える6人の「無力な男たち」...それでも、彼らであるべき理由があった
Xi’s Men
■王滬寧(ワン・フーニン、序列4位)
おそらく最も興味深い存在だ。趙と同様に前期からの留任組で、政治理論の専門家として、党のイデオロギーを明確化し実践に移す「中央政策研究室」を率いてきた。
一方で「中国のキッシンジャー」と呼ばれたこともあり、胡錦濤政権でも重用された。当時の彼は、弱体化した西側諸国に代わって中国が台頭するという中華民族主義の主張を掲げていた。
1991年の著書『美国反対美国(米国が米国に反対する)』ではアメリカの衰亡を予測したが、この10年ほどは一転して、中国はアメリカとの文化戦争に負けている、中国の若者が今以上にアメリカ化しないように取り締まることが必要だと力説してきた。
結果として国内の若者を外界から隔離することには(ある程度まで)成功したように見えるが、中国文化の輸出はうまくいっていない。
アメリカに追い付き、追い越せ。そういう王の主張にも、経済成長率8%の時代なら一定のリアリティーがあった。しかし今の成長率は2.5%に向けて下がり続けている。それでも習近平の意向に背くことはできないから、王は従来の主張を頑強に維持するしかない。
そうなると、国内向けの世論工作では露骨に反米的な世界観が強調されることになる。そして現場の外交官たちは、点数を稼ぐために攻撃的な「戦狼外交」を続けることにもなる。
■蔡奇(ツァイ・チー、序列5位)
習にとっては政界でいちばん付き合いが長い友人だ。1985年に福建省の党組織で出会って以来ずっと共に働いてきた仲。90年代に入ってからは習が上司の立場にあるが、親密な関係を保っている。習の部下として多くのポストを渡り歩き、党の中核たる習の役割を盛り上げることに邁進してきた追従者だといえる。
直近の職務は北京市党委書記で、習が自身の近くに置くための人事のように見えた。首都の運営に当たっては、北京市内の環境浄化を名目として貧困層の暮らしに大打撃を与えた。2017年冬には強制退去の対象となった数十万人が冷たい路上でホームレス生活を強いられ、当局が方針を撤回するという面倒な事態を招いたが、全ては党中央の方針に沿ったこと。最終的には冬季五輪を成功裏に開催して称賛された。