習近平に仕える6人の「無力な男たち」...それでも、彼らであるべき理由があった
Xi’s Men
■李強(リー・チアン、序列2位)
北京の人民大会堂で新常務委員がお披露目された際は、習近平に続いて壇上に上がった。来年3月に退任する李克強首相の後釜に座るのは確実だが、中国における首相の地位は微妙で、たいていは目立たない。ある意味ではアメリカの副大統領に似ているが、いざというときトップの座を継ぐ立場にはない。
かつて首相を務めた周恩来や温家宝(ウエン・チアパオ)は、冷酷な最高指導者に代わって国民に寄り添う政治家として存在感を示した(温は地震などの被災地に出向いて涙を流し、共感を得た)。しかし習は、李克強の存在感を徹底的に消した。後を継ぐ李強も同じ運命だろう。
李強が出世したきっかけは、05年に浙江省の党常務委員会に入り、習の下で働き始めたこと。その後は同省の省長、次いで江蘇省トップを務め、習の国外視察には必ず同行するようになった。
しかし中央政府での経験は皆無だ。首相候補としては異例なことで、どう見ても習近平に逆らえる立場ではない。
しかも、政治的な汚点がある。李強は17年から上海市党委員会書記を務めているが、今年になって新型コロナウイルスの感染拡大を許し、厳格なロックダウンを実施して地域の経済活動に深刻な影響を及ぼした。それまでの李強は民間企業に優しく、感染予防対策でも融通を利かせていたのだが、いざとなると中央政府の「ゼロコロナ」政策に従うしかなかった。
これで彼はメンツをつぶし、今まで以上に習近平の庇護にすがるしかなくなった。だから今後も、習の下働きに徹するしかあるまい。
■趙楽際(チャオ・ローチー、序列3位)
前期の常務委員会から留任した2人のうちの1人で、前期では最年少だった。ひとことで言えば、信頼できて安心できる人物を絵に描いたような男だ。
党人として、まずは地方レベルで実績を残してキャリアを積み上げ、この5年間は党内の思想統制や腐敗摘発に取り組む中央規律検査委員会を率いて習近平を支えてきた。誰かの摘発で主導的な役割を果たしたようには見えないが、是々非々で巧みに差配してきたということだ。
父親は陝西省の下級公務員で、大叔父はかつて同省の省長を務めていた。習の一族も陝西省との縁は深く、趙の大叔父は習の父と親しかったとされる。そうであれば趙の忠誠心も高いはずだ。