最新記事

東南アジア

東ティモール11番目の加盟国に ASEAN首脳会議で合意

2022年11月12日(土)21時30分
大塚智彦

その後インドネシア併合派と独立派による衝突などを経ながらも2002年5月20日に21世紀最初の独立を果たした国となった。

同日夜の独立記念式典には国連のコフィ・アナン事務総長やシャナナ・グスマン初代東ティモール大統領、インドネシアのメガワティ・スカルノプトリ大統領などが参列し、東ティモール国旗が掲げられ、国歌がディリの夜空に響き渡った。

長年独立闘争を海外で続けたジョゼ・ラモス=ホルタ氏とディリのカソリック教会ベロ司教には1996年にノーベル平和賞が授与されている。

東ティモールの人口は約130万人で農業やコーヒー農園、漁業が主な生計となっている。

ASEAN加盟4条件をクリア

ASEAN加盟には少なくとも4つの条件をクリアしなければならないとされている。まず一般的に東南アジアと認識される地域内に存在すること。かつてオーストラリアがASEAN加盟に意欲を見せたことがあるが、地理的に東南アジアではないとして検討されなかったことがある。

次にすべての加盟国(インドネシア、シンガポール、マレーシア、フィリピン、ミャンマー、タイ、ラオス、カンボジア、ベトナム、ブルネイ)の同意が必要になる。第3の条件はASEAN憲章の遵守に同意すること、そして加盟の義務を果たす能力と意欲、となっている。

ASEAN関係筋によると7月に東ティモールの実情を調べる調査団が現地に派遣されており、東ティモール加盟への準備は整っていたという。

東ティモールはしばらくの期間はASEANオブザーバーの資格を与えられて一連の会議に出席し、その後正式の加盟国となることで全メンバー国が一致したという。

もっともミャンマー軍政のトップで「首脳格」のミン・アウン・フライン国軍司令官は今回の首脳会議には招待されておらずミャンマー代表は欠席している。

2022年初め、東ティモールのラモス・ホルタ大統領は長年の努力にも関わらずASEAN加盟が実現しないことに関して「天国への入り口よりASEAN加盟の入り口は遠い」と嘆いたとされるが、それだけ念願だった加盟が実現したことで東ティモールの努力がようやく報われた形となった。

otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マスク氏、近く政権離脱か トランプ氏が側近に明かす

ビジネス

欧州のインフレ低下、米関税措置で妨げられず=仏中銀

ワールド

米NSC報道官、ウォルツ補佐官を擁護 公務でのGメ

ワールド

トランプ政権、輸入缶ビールに25%関税賦課 アルミ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 9
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 10
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中