アメリカも警戒する、イスラエル人技術者への中国からのスカウトメールとは?
BEIJING’S BIG BET
そしてファーウェイには、イスラエルで秘密裏に取引を行った過去がある。16年にはイスラエルの研究開発企業トーガ・ネットワークスを秘密裏に買収したことが明らかになった。同社は現在、ファーウェイのイスラエル支社となっている。ほかにもファーウェイは、イスラエルのデータセキュリティー会社「ヘクサティア」を所有している。
中国がインフラやハイテク部門でターゲットを絞った買収を進めていることに警戒感を強めたアメリカは、18年に米企業への投資を審査する「対米外国投資委員会」による規制を強化。ほかの国々もアメリカに続き、同様の対策を取った。
さらにアメリカは現在、民間企業が中国など外国に投資を行う際の契約を通じて、技術が国外に流出する案件の審査を行うための措置にも着手している。
この国家重要能力防衛法案(草案)は、対外投資の案件を安全保障の観点から審査し、禁止する権限を持つもので、超党派議員団とホワイトハウスの支持を得ているが、アメリカのビジネスに打撃をもたらすと反対する声もある。
さらに7月には、米英の安全保障当局が自分たちの懸念を公表するという異例の動きを取った。米FBIのクリス・レイ長官は、MI5(英国情報部5部)のケン・マッカラム長官とロンドンで共同会見を開き、中国政府が「民間部門の価値ある情報を狙い、諜報活動を大幅に強化させている」と警鐘を鳴らした。
レイは中国の国家安全部の地方支部が「航空からAI、医薬などあらゆる分野で西側企業の革新的技術を狙っている」と指摘。
マッカラムも、イギリスの航空分野の専門家が「ある企業からオンラインでアプローチを受け、魅力的な雇用機会を提示された」ことを明かした。この人物は「報酬と引き換えに軍用機についての詳しい技術情報を求められた。問題の『企業』は、実際には中国の諜報機関が運営していた」と言う。
よほどのスキャンダルが出ない限り、イスラエルがアメリカのような審査メカニズムを導入するとは思えない、と言うのは同国の国家安全保障研究所に所属するドロン・エラだ。
「イスラエル側は動かないが、アメリカとの関係を壊すような事態が起きれば話は別だ。そういう事態はカラーチップ社の買収かもしれないし、別の取引かもしれない」