アメリカも警戒する、イスラエル人技術者への中国からのスカウトメールとは?
BEIJING’S BIG BET
中国はまだ「優れた収入源」
元米商務次官代行のニカクタルは、「世界のほかの国々は中国について、まだアメリカと同じほどの懸念を抱いていない」と述べ、こう続けた。「ほかの多くの国にとって、中国はいい収入源だ。彼ら自身が中国の経済戦争や威嚇の標的になれば、それも変わるだろうが」
重要な(そして稼げる)技術の移転が起きるのは企業買収(とスパイ活動)の場だけではない。アメリカ政府の元職員であるジェフ・ストフの調査によれば、イスラエルの少なくとも4つの大学の科学者たちが、中国の少なくとも5つの軍事研究施設で共同研究に携わっている。
なかには中国の防衛産業や人民解放軍とつながりの深い「国防七校」に属する西北工業大も含まれ、研究計画は新型の航空機エンジンから会話分析アルゴリズムの開発(録音時のノイズなどを極限まで減らせば監視システムの能力が向上する)まで多岐にわたる。
アブラハム合意(イスラエルとアラブ諸国の関係正常化を目指す米主導の一連の合意)だけでなく、中国が中東への関与を強めていることも理由となって、中東全域でさまざまな変化が起きている。
イラクは貿易や学校建設で中国との協力を深めており、昨年の取引総額は数十億ドルに上った。サウジアラビアと中国の間では、インフラや石油をめぐる取引が活発に行われている。イスラエルは、天敵イランと中国の友好的な関係をいまだ懐疑的に見ているものの、自分たちも中国と友好関係を深めたいと考えている。
前出のアサフ・オリオンが言う。「イスラエルにとって、中国は最大の脅威ではない。敵でもライバルでもないが、盟友でもない。若干の問題はあるが、パートナーだ」。ただし、政府も国民も一定のリスクに気付いているとして、「もう蜜月は終わり」だと付け加えた。
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