アメリカも警戒する、イスラエル人技術者への中国からのスカウトメールとは?
BEIJING’S BIG BET
匿名で取材に応じた事情通のイスラエル人によれば、ある中国企業が米企業のイスラエル法人を通じて合法的に半導体を購入したときのこと。中国側は設計上の「テクニカルな問題」があるとしてイスラエル側に解決策を問い合わせてきた。それで「イスラエル側は顧客のために問題を解決してやった」と、この人物は言う。
それがどんな問題で、どんな意図があったかは不明だ。いずれにせよ「イスラエル側のノウハウには中国側の技術的な問題を解決する力がある」わけで、「半導体の自給体制を確立したい中国にとって、それはささやかな一歩になったはずだ」と、この人物は言う。
監視の目をかいくぐった取引もある。2年前、浙江省にある中国の国営投資会社「光彩芯辰」が、イスラエルの半導体メーカー「カラーチップ」の買収を計画した。第5世代(5G)通信網や自律走行車、AIなどの開発に不可欠な大容量データの高速通信に使うコンポーネントを手掛ける企業だ。
この買収案件はいまだに、イスラエル最大規模の企業情報サイト「IVC」に掲載されていないが、実は取引の場はアメリカに移っていた。去る3月、光彩芯辰は米ニューメキシコ州の半導体メーカー「スコーピオス・テクノロジーズ」と、中国を含む顧客向けに共同でパーツの開発・製造を行う「戦略的パートナーシップ」契約を結んだのだ。
スコーピオスの販売・マーケティング担当上級副社長であるデービッド・ハフは、軍民両用の技術を輸出するわけではないから、この取引は合法だと弁明し、製造準備の整った工場を中国に持つことで、アメリカに「数多くの製造施設」を建設せずに済むと語った。
かつて米商務省の次官代行として輸出管理を担当したナザク・ニカクタルは、こうした活動の裏には技術移転という中国の狙いがあると指摘している。
ファーウェイとイスラエル
もしも華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)がカラーチップの買収に関与していたら、こういう展開にはならなかったと、ハフは本誌に語った(同社が関与していないことは確認済みだという)。アメリカなど各国は、ファーウェイがソフトウエアの更新などを通じてスパイ行為を行っているとして、同社および系列企業との取引を禁じている。
だが複数の中国企業の報告書によれば、「光彩芯辰が世界のリーダーになるのを支援する」と表明している深圳市の企業「恒信華業」にはファーウェイの経営陣が関与しており、カラーチップが光彩芯辰の子会社であることも明記されている。恒信華業のポートフォリオ一覧にはカラーチップが含まれているという。