アメリカも警戒する、イスラエル人技術者への中国からのスカウトメールとは?
BEIJING’S BIG BET
iHLSの編集長アリエ・エゴジは1月、中国の覆面会社が「表面的には合法だが実はイスラエルの防衛技術を中国に移転する目的の企業を設立する目的で」イスラエル企業との提携を模索しているとの懸念をアメリカが伝えてきたと述べている。
その懸念を裏付けるようなスキャンダルが昨年発覚している。検察によると、無人機業界でパイオニア的存在のエフライム・メナシェが中国企業にハーピーのような無人自爆攻撃機(空中を旋回して待機し、標的が特定されたら突進して自爆する)を違法に売却したという。
この件は、中国国内では党公認のコンテンツを流す上海春秋発展戦略研究院の系列サイトで、嘲笑的な調子で否定された。ただし自爆ドローンのような目を引く技術ばかりがアメリカの懸念事項というわけではない。もっと地味な技術でも、ひとたび中国の手に渡れば経済活動や技術分野で世界のパワーバランスを変化させる恐れがある。
「イスラエルの高度な能力、特に先端技術、サイバー、医薬品、農業に関する能力は、中国の勢力拡大計画のほぼ全ての側面に貢献する可能性を持つ」とベン・モシェは書いた。「だから中国の諜報活動のパターンを知り、イスラエル国内の対象に近づかせないことが不可欠だ」
イスラエルの新興技術が合法的な商取引や共同研究によって獲得される場合もある。合法的な手段による技術移転はアメリカでも起きているが、何といってもイスラエルには高度に発達した情報セキュリティー関連の技術がある。
例えば、どんなスマートフォンにも侵入できるというスパイウエア「ペガサス」は、イスラエルに拠点を置くNSOグループがライセンスを供与している。
中国の統制経済では、商取引も政治的な目的で行われるのが常だ。アメリカが中国への半導体輸出などで規制を強化したため、中国政府は代わりにイスラエルから入手することを考えている。
ちなみに、広東省広州市の海国図智研究院が今年4月に発表した論文には、「イスラエルの多国籍・国内半導体企業は新しい世界的な半導体研究開発拠点として、中国の半導体産業にとって戦略的意義がある」と記されている。
一方でイスラエルは、インテルをはじめとする多国籍企業の現地法人を通じて中国に何十億ドル相当の半導体を輸出しており、これを通じてアメリカの技術が中国側に渡っている可能性がある。