最後のご奉公? 97歳のマハティール元首相、マレーシア総選挙に出馬を表明
「最後のご奉公」という私心なき心情
今回再び総選挙への出馬の意思を表明したマハティール前首相は「首相候補にはならず、あくまで議員としての出馬」とみられている。
狙いがどこにあるかは明確ではないが、再び野党による政権交代を実現して与党の旧態然とした体質改善を促した時点で議員も辞職して余生を送ることを考えているのではないかとの見方も出ている。
もし与党が総選挙で勝利すれば汚職容疑で服役中の「ナジブ元首相の恩赦」に動く可能性が高いこともあり、「マレーシアの腐敗体質への回帰」を阻止したいとの正義感に裏打ちされた強い意志もマハティール元首相にはあるものとみられている。
それは「国民への最後のご奉公」という気持ちが97歳での出馬に踏み切る決断を促したと言えるだろう。
「私心がなくどこまでも国民を第一に考える政治信条」は依然としてマハティール元首相を突き動かしているのだ。
マハティール元首相の総選挙出馬の意向表明に対して与党UMNO側の反応は伝えられていないが、「97歳のマハティール元首相の出馬はありえない」との大方の予想を覆す挙に驚きと衝撃が隠せないのが実情だろう。
また今回のマハティール元首相の出馬は2020年に実質的に袖を分かった野党連合からではなく2020年に立ち上げた新党「プジュアン(戦士)」などからの出馬となる予定という。
いずれにしろ2018年の総選挙と同様にマハティール元首相は選挙の「台風の目」になることは間違いない。2018年の首相再任時に92歳と「民主的に選出された国家指導者として世界最高齢」との記録を樹立したマハティール元首相は、今回の総選挙で当選すれば「世界最高齢で選出された国会議員」となるのは確実で、国際社会の注目を集める状況となっている。
[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など