ミャンマー裁判所、ジャーナリスト久保田氏に禁固10年の判決 拘束長期化か
今回の久保田氏の禁固10年の判決は北角氏の例と比較すると罪状に扇動罪が加わったことなどから拘束期間は長引いている。
この間、日本からは自民党の渡辺博道・元復興大臣が8月11日にミャンマーを訪問し首都ネピドーで軍政トップのミン・アウン・フライン国軍司令官と会談して久保田氏の早期釈放を求めた。
渡辺氏に対しミン・アウン・フライン国軍司令官は「久保田氏を近く釈放する。日時は追って連絡する」と応え、久保田氏の早期釈放が期待されたが現実とはならなかった。
背景に対日関係に配慮か
ミャンマーと日本の関係はクーデター後もほぼ変わらず、対日輸出は今年5月の時点でも前年同月実績を70%近く上回り、プラスの成長がこれで5カ月目となったという。輸出品目は主に衣類や農産物でこれが好調だったことが大きな要因とされている。
またキリンホールディングスのミャンマーでの2022年1月から6月までの事業利益が46億円に上ることも報道で明らかになっている。キリンホールディングスでは現地ミャンマーの子会社でビールの製造・販売を手掛けている。
このようにミャンマーと日本の関係は経済的に良好な状態が続いており、軍政が日本を無視できない主な理由となっているのは間違いないとみられている。
このため久保田氏の裁判でも入管法違反容疑の判決が出た段階で北角氏のように釈放、強制退去の可能性も残されている、と関係者は期待している。
[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など