イラン製ドローン調達でもロシア軍がハイマースに勝てない理由
Can Russia Defeat U.S. HIMARS in Ukraine With Iran's Drones?
米国防総省のトッド・ブリーシール報道官はウェブメディア「ポリティコ」に対して、ロシアがイランから調達したのは、「モハジェール6」と「シャヘド」シリーズの2種類のUAV(無人航空機)だと述べた。空対地ミサイルの搭載や電子戦、戦場での標的特定など、戦闘と偵察に使うことができるUAVだ。
シャヘド129は、おそらくイラン製のドローンの中で最も優れた性能を持ち、トルコがウクライナに供与した「バイラクタルTB2」に比べて航続距離が約1770キロメートルも長く、最大搭載量も226キロ以上多い。
米国務省のベイダント・パテル報道官は8月30日に行った記者会見の中で、ロシアの輸送機が「8月に数日間にわたって」イランの飛行場でUAVを積み込み、ロシアに移送したと説明。各国からの制裁により「物資が大幅に不足」したことへの対応として、イランからUAVの調達を行ったものだと述べた。
「ロシアの操縦士たちは、イランで無人機の運用訓練を継続している。ロシアは(軍事物資の不足により)イランのような信頼性の低い国に供給を頼らざるを得なくなっている」とパテルは指摘した。「我々が入手した情報は、今回の移送に関連のあるUAVに、既に幾つもの不具合が出ていることを示している」
「訓練にはまだ時間がかかるだろう」
防衛問題情報サイトSOFREPのショーン・スプーンツ編集長は、ロシアがイラン製ドローンをウクライナでの戦闘戦略に効果的に取り入れられるかどうかについて、懐疑的な見方を示している。ロシアがイラン製ドローンの「ハードポイント(取り付け部分)」に誘導ミサイルをフィットさせるか、イラン製のソフトウェアがドローンからロシア製ミサイルに標的の情報をきちんと送信するか。それが出来なければ、ドローンを導入しても機能させることはできないからだ。
「イラン製のドローンは、彼らが作戦展開を行っているイラクやイエメンの地域では十分な性能を発揮するかもしれないが、ウクライナではまた別の話だ」とスプーンツは本誌に述べた。「ウクライナ軍は、自分たちが保有するドローン群の操縦だけではなく、ロシア製ドローンの撃墜にも長けている。それも、ロシアがイランからドローンを調達した理由の一つだ」
スプーンツは、ロシアがウクライナで「シャヘド129」ドローンを展開するにあたっては、衛星通信システムがないため、地上のリレー基地または航空機での誘導が必要になると指摘した。イラン側が、地上または空中のリレーシステム(一度に導くことができるドローンは1機のみ)を提供することも必要になるだろう。
「ドローン100機を運用するために、ロシアは200人の操縦士に加えて、地上の技術者も訓練しなければならない」と彼は述べ、さらにこう続けた。「この訓練には数週間かかる可能性がある。イランが一度に100機や200機のドローンを納品できるのかについても、私は懐疑的に見ている。イランの工場がそんなスピードでドローンを量産できるのか、誰も知らないのだから」