最新記事

ドローン

イラン製ドローン調達でもロシア軍がハイマースに勝てない理由

Can Russia Defeat U.S. HIMARS in Ukraine With Iran's Drones?

2022年9月1日(木)17時53分
ニック・モドワネック

イラン製のドローンの中で最も優れた性能を持つとみられる大型ドローン「シャヘド129」 Future Technology of Military/YouTube

<イラン製の攻撃用ドローンを導入することで、ウクライナの軍事目標を叩くことはできるようになるかもしれないが、ハイマースのような動く標的を破壊するのに必要な精密誘導弾は不足したままだ。この弱点を乗り越えるには高いハードルがいくつもある>

ロシアがついに、噂されていたイラン製の攻撃用ドローンの調達を開始した。だが専門家はこれらのドローンが、アメリカがウクライナに供与し、次々と戦果をもたらしている高機動ロケット砲システム(HIMARS=ハイマース)に大きな打撃をもたらすかどうかについては、分からないとしている。

米国防総省は、ウクライナ南部のクリミアとヘルソンで戦闘が激化するなか、ロシアがイラン製のドローン数百機を調達し、その一部を入手したことを確認した。だがドローンの操縦には十分な訓練が必要で、ドローン導入がロシアの作戦成功につながるとは限らない。ロシア側はいまだに精度の高いミサイルが不足しており、ハイマースのような動く標的を狙うことが難しい状況だからだ。

米海兵隊の元大佐マーク・カンシアンは本誌に、「ドローンはロシアが保有する長距離無誘導ロケット弾と連携して機能するが、大きな効果は期待できない」と言う。「ドローンから得た情報を効果的な攻撃につなげるには、さらに偵察標的攻撃システムを開発する必要がある」

カンシアンによれば、ロシアのドローン戦略はウクライナの戦略と似ており、砲撃の目標を特定したり、搭載したミサイルで軍事施設を爆撃したりするのに使うつもりと思われる。

HIMARSに抵抗するための戦略が必要に

ロシアがドローンの操縦および維持・管理に慣れるまで、どれぐらい時間がかかるかは分からないとカンシアンは言う。だがロシア側がドローンの効果的な使い方を習得すれば、ウクライナは現在ロシアが経験しているような、軍司令部への攻撃や兵站の妨害に直面することになるだろうともつけ加えた。

ウクライナによるハイマースや戦闘機を使った攻撃で、ロシア軍の兵士の士気は「救いようのないほどに低下した」と報じられている。それがウクライナの反撃を勢いづかせるのに役立ち、ロシアにとってはハイマースなどの兵器に対抗するための戦略がどうしても必要になった。

米海軍分析センターのロシア専門アナリストであるサミュエル・ベンデットは、「ロシア軍の幹部が破壊を狙っている兵器リストの最上位にあるのが、ハイマースとM777榴弾砲だ」と本誌に述べた。「ロシアが標的を特定し、迅速にそれを攻撃する追加の能力を必要としている理由もそこにある」

その上でベンデットは、ロシアが既に戦闘での使用経験を持つ国からドローンを調達したいと考えた場合、イランが唯一の現実的な選択肢だったと指摘した。

【映像】イランが誇る大型ドローン「シャヘド129」
【映像】イラン革命防衛隊の地下ドローン施設
【映像】米海兵隊が開発中の対ドローン防衛システム

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

円安一服か見極め、介入警戒感が再台頭=今週の外為市

ビジネス

グーグルがブラウザ標準搭載契約見直し案、独禁法違反

ワールド

トランプ氏、CEA委員長にミラン氏指名 元財務省高

ワールド

ブラジル上院、ルラ政権による歳出削減計画関連の最終
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:アサド政権崩壊
特集:アサド政権崩壊
2024年12月24日号(12/17発売)

アサドの独裁国家があっけなく瓦解。新体制のシリアを世界は楽観視できるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    トランプ、ウクライナ支援継続で「戦況逆転」の可能…
  • 5
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 6
    「私が主役!」と、他人を見下すような態度に批判殺…
  • 7
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 8
    「オメガ3脂肪酸」と「葉物野菜」で腸内環境を改善..…
  • 9
    「スニーカー時代」にハイヒールを擁護するのは「オ…
  • 10
    「たったの10分間でもいい」ランニングをムリなく継続…
  • 1
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 4
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達し…
  • 5
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 6
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 7
    【クイズ】アメリカにとって最大の貿易相手はどこの…
  • 8
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 9
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 10
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 1
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 8
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 9
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 10
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中