最新記事

東南アジア

ミャンマー軍政、学校をヘリから空爆 児童11人殺害し証拠隠滅のため遺体火葬

2022年9月21日(水)08時18分
大塚智彦
血痕の残る僧院学校の床

ミャンマー軍政が攻撃した僧院学校  RFA Burmese / YouTube

<1度の攻撃による子供の犠牲としては過去最悪の事態に──>

ミャンマーの北西部ザガイン地方域にある村の僧院学校が軍のヘリコプターから空爆を受けて児童11人が死亡した。一度の戦闘で子供が11人死亡したケースは2021年2月1日の軍によるクーデター以降初めてとみられ、民主派勢力は怒りをつのらせている。

9月16日午後1時ごろ、ザガイン地方域タバイン郡区レット・エット・コネ村にある仏教の僧院学校が、上空のMi35ヘリコプター2機から空爆を受け、僧院学校で学ぶ児童ら7人が即死し、教師3人と児童14人が負傷した。

その後、輸送ヘリから降り立った約80人の兵士が僧院学校を包囲して攻撃を続けた結果、さらに児童2人が死亡した。兵士は児童の遺体や負傷者約20人を民間人から強制的に奪ったトラックで約11キロ離れたエ・ウーにある伝統医学病院に搬送した。同病院はこの地域の軍の拠点となっていた。

軍に徴用されたトラックの運転手は「遺体は兵士と思っていたが、中を見るとみんな子供だったので大きなショックを受けた」と話しているという。

同病院で治療中に死亡したとみられる児童2人が確認され、これで児童の犠牲は11人となった。さらに負傷した児童には手足を攻撃で吹き飛ばされた重傷者も含まれているという。

児童の遺体を火葬、証拠隠滅か

僧院学校から遺体や負傷者を運ぶ様子を目撃した村人は独立系メディア「イラワジ」に対して「死亡した児童の遺体は手足や下半身が切断され、学校内は血糊と肉片があちらこちらに残っていた。兵士はバラバラの遺体を竹のバスケットに入れて運んだ」と証言しており、悲惨な状況だったことが明らかになったとしている。

軍は死者と負傷者を運んだ伝統医学病院で襲撃の翌日にあたる9月17日の午後4時ごろ、犠牲となった児童11人の遺体を全て火葬に付して病院敷地内の墓地に埋葬したという。

子供が行方不明になった両親が攻撃された僧院学校を訪れたが、残されていたのは子供の衣服だけだったため「もし死んだとしても葬儀も行えない」と悲しみに暮れていたという。

「イラワジ」は「火葬は軍による証拠隠滅の可能性が高く、多くの児童が犠牲になった攻撃は許されるものではない」と報じて軍政への反発を強めている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

グーグルがブラウザ標準搭載契約見直し案、独禁法違反

ワールド

トランプ氏、CEA委員長にミラン氏指名 元財務省高

ワールド

ブラジル上院、ルラ政権による歳出削減計画関連の最終

ビジネス

CFPBが米大手3行提訴、送金アプリ詐欺で対応怠る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:アサド政権崩壊
特集:アサド政権崩壊
2024年12月24日号(12/17発売)

アサドの独裁国家があっけなく瓦解。新体制のシリアを世界は楽観視できるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    トランプ、ウクライナ支援継続で「戦況逆転」の可能…
  • 5
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 6
    「私が主役!」と、他人を見下すような態度に批判殺…
  • 7
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 8
    「オメガ3脂肪酸」と「葉物野菜」で腸内環境を改善..…
  • 9
    「スニーカー時代」にハイヒールを擁護するのは「オ…
  • 10
    「たったの10分間でもいい」ランニングをムリなく継続…
  • 1
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 4
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達し…
  • 5
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 6
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 7
    【クイズ】アメリカにとって最大の貿易相手はどこの…
  • 8
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 9
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 10
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 1
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 8
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 9
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 10
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中