最新記事

教育

日本全国の「小学校卒」の人たちは推計およそ100万人

2022年9月7日(水)11時10分
舞田敏彦(教育社会学者)
大人の学生

行政には夜間中学など教育機会の整備が求められる(画像はイメージ写真です) millann/iStock.

<義務教育を終えられなかった高齢者や外国人の人たちに、教育の機会を提供するのは行政の責務>

2020年の『国勢調査』の結果が順次、公表されている。政府が5年おきに実施する基幹統計調査で、西暦の下一桁がゼロの年には国民の最終学歴も調べられる。

2020年調査の目玉は、学歴のカテゴリーが細かくなっていることだ。従前とは違い、小学校卒と大学院卒というカテゴリーが新たに設けられている。メディアでは前者の数が注目され、「小学校卒80万人」という見出しが大手媒体の記事に踊っている。

原資料を見ると、15歳以上の学校卒業者のうち小学校卒は確かに80万4293人となっている。だが学歴はデリケートな項目なので、回答拒否等の理由による「不詳者」が多い。この中にも小学校卒はいるはずで、この部分を無視するわけにはいかない。

学歴不詳者の中で小学校卒は何人いるか。この点を推し量り、上記の80万4293人に加算する必要がある。いわゆる不詳補完推計というものだ。<表1>をもとに、手順を説明する。

data220907-chart01.png

まずは学歴回答者(小学校卒~大学院卒)の中で、各学歴カテゴリーの人が何%かを出す。表のb欄がそれで、小学校卒は0.938%だ。この割合を学歴不詳者(1505万9305人)にかけると、14万1325人となる。この数が、学歴不詳者の中での小学校卒と推測される。

要するに、学歴回答者の中での割合でもって、学歴不詳者を各学歴カテゴリーに割り振る(按分する)わけだ。その数は、c欄に示されている。

したがって、統計表で分かっている小学校卒80万4293人に、この割り振り分(14万1325人)を足して、最終学歴が小学校卒の人は94万5618人と見積もられる。不詳補完推計でより精緻化した数だ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アクティビスト、世界で動きが活発化 第1四半期は米

ワールド

フィンランドも対人地雷禁止条約離脱へ、ロシアの脅威

ワールド

米USTR、インドの貿易障壁に懸念 輸入要件「煩雑

ワールド

米議会上院の調査小委員会、メタの中国市場参入問題を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中