「停滞した田舎のお荷物」──ジョンソンの暴言の置き土産「保守党問題」
Johnson’s Toxic Legacy
ジョンソン(左)はロンドン市長時代からスコットランドを見下すような発言を連発してきた ANDREW MILLIGAN - WPA POOL/GETTY IMAGES
<サッチャー政権に衰退させられた地方都市にとっては、もともと保守党は宿敵。9月5日に決まる新党首が誰であろうと、スコットランドでアンチ保守党感情が払しょくされない理由とは?>
英保守党で、ボリス・ジョンソン英首相の後継者選びが佳境に入っている。リシ・スナク前財務相とリズ・トラス外相の一騎打ちとなっているが、9月5日に結果が発表される党首選でどちらが勝利しても、ウクライナ問題から猛烈なインフレまで、山のような難題を引き継ぐことになるのは間違いない。
なかでも最大の国内問題は、イギリス憲法の未来、つまりイングランドとウェールズ、スコットランド、そして北アイルランドから成る連合王国としてのイギリスの未来だ。
スコットランド行政府(地方政府)のニコラ・スタージョン首相は、ジョンソンが辞意を表明する直前の6月末、独立の是非を住民に改めて問う計画を示した。2014年に行われた住民投票では、イギリスへの残留を希望する住民のほうが多かった。
地方の独立の是非を問う住民投票は、イギリス首相の承認がなければ拘束力がない。そしてジョンソンも、2人の次期党首(つまりは次期首相)候補も、再投票を承認するつもりはないと明言している。このためスタージョンは、首相の承認がなくても住民投票を認めてほしいと、現在、英最高裁に申し立てている。
最高裁が再投票を認めない判決を下した場合、スタージョン率いるスコットランド民族党(SNP)は、次期総選挙で独立を最大の争点に位置付けることにより、事実上の住民投票にするだろう。
だが、この戦略はリスクが高い。まず、独立派が過半数を獲得するのは容易ではない。なにしろ14年に1度敗北しているし、15年の総選挙でSNPが大勝利したときも、スコットランドでの得票率は50%には届かなかった。失敗すれば、独立の夢は当面絶たれ、スタージョンは辞任に追い込まれるかもしれない。
いずれにせよ、保守党の次期党首は、ジョンソンによって一段と高まったスコットランドのアンチ保守党感情に対処しなければならない。
ジョンソン不支持が83%
ブレグジット(イギリスのEU離脱)を問う16年の国民投票で、ジョンソンは離脱派の先頭に立ったが、スコットランドではEU残留支持が離脱支持を24ポイントも上回った。
そもそもジョンソンは、中央から地方への権限移譲を「国境の北側の災難」だと言ったり、ロンドン市長時代には、スコットランドは経済的に停滞した田舎で、ロンドンのお荷物的存在と位置付けたりした。このためスコットランドでは、ジョンソンの不支持率は83%にも上る。