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「ロシア軍より強い」危険な集団...北朝鮮のウクライナ「派兵」が戦況を変える?

North Korea in Ukraine?

2022年8月18日(木)19時34分
A・B・エイブラムズ(米朝関係専門家)

「犠牲を顧みず任務完遂に死力を尽くす」

砲兵隊に加え、北朝鮮の特殊部隊はシリア内戦での暗躍も伝えられ、ウクライナでもロシアに数々の戦果をもたらすはずだ。北朝鮮の特殊部隊の兵力は推定18万~20万人で、世界最大規模を誇る。英情報機関の評価によると、「士気が非常に高く、強固な政治的信念を植え付けられ、よく訓練され......あらゆる不測の事態を常に自軍に有利な展開に持ち込み、犠牲を顧みず任務完遂に死力を尽くす」。

シリア内戦に派遣された2つの北朝鮮の特殊部隊は、その敵である反政府派の指導者たちから「死ぬほど危険」な集団として恐れられた。装備、訓練共にウクライナ軍よりはるかに強力な仮想敵の陣地に潜入して工作を行う訓練を受けており、ロシア軍およびウクライナの親ロ派部隊との連携がうまくいけば、戦況を大きく変える可能性がある。

北朝鮮の兵士は朝鮮人民軍の兵士としてではなく、「義勇兵」として参戦するとも報じられている。これは中国が朝鮮戦争に軍事介入した際のやり方だ。この方法なら北朝鮮はウクライナとウクライナを支援している国々と表立って交戦状態に陥らずに済む。

とはいえ、兵員を派遣すれば、北朝鮮は欧米陣営に戦争を仕掛けたも同然だ。北朝鮮とアメリカはこれまで複数の紛争に陰に陽に介入し、いわば間接的な戦争を続けてきた。その最新の例がシリア内戦だ。そこへウクライナ戦争が加わり、北朝鮮の参戦でロシアが一気に攻勢を強める可能性もある。北朝鮮はアメリカとの因縁の対決にウクライナで突破口を開こうとしているのかもしれない。

©2022 The Diplomat

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