「ロシア軍より強い」危険な集団...北朝鮮のウクライナ「派兵」が戦況を変える?
North Korea in Ukraine?
米HIMARS以上の砲撃力を誇る
北朝鮮はロシアと国境を接し、東アジア情勢が緊迫すればロシアと同盟を組む立場にある。ウクライナでロシア軍と共に戦った経験は東アジアでも大いに役立つはずだ。
中国とイランはロシアのウクライナ侵攻を真っ向から非難することには及び腰だが、北朝鮮は公然とロシアを支持してきた。3月初めに国連総会でロシア非難決議が採択されたときにはエリトリア、ベラルーシ、シリアと共に反対票を投じた。ロシア以外で反対票を投じた国はこの3カ国と北朝鮮だけだ。
欧米の影響力が及ばない権威主義的な国々は総じて大した軍事力を有していない。中国とイランを除けば、ロシアの強力な助っ人となり得る国は数えるほどしかなく、北朝鮮はその希少な国々の1つだ。
中国とイランは欧米諸国との関係改善の道を完全に閉ざしたわけではいない。だが長年にわたりはるかに厳しい制裁措置を受けてきた北朝鮮は事情が違う。ウクライナ戦争に介入し、ロシアおよびドンバス地域の親ロ派と関係を強化したところで、失う物ははるかに少ない。むしろ介入によりロシアとの経済的結び付きが強まり、北朝鮮とロシアの孤立化を目指す欧米の制裁の効果が薄れるなら、北朝鮮にとっては万々歳だ。
特にドンバス地域との関係強化は北朝鮮に大きなメリットをもたらし得る。親ロ派が統治する2つの「共和国」は国連に加盟していないから、国連安全保障理事会が決めた制裁措置には縛られず、北朝鮮と自由に貿易を行える。国連加盟国のロシアには労働力や兵器を公然と輸出するわけにはいかないが、ドンバス地域を経由することでそれも可能になる。
北朝鮮の特殊部隊と陸軍、さらにひょっとすると砲兵隊の一部の兵力はロシアのそれよりかなり大きい。しかも地上戦におけるいくつかの分野に重点を置いてきたおかげで、冷戦以降、一連の重要な能力ではロシア軍を上回るレベルに達している。一例を挙げれば北朝鮮の最新のロケット砲システム、具体的にはKN09とKN25はロシア製のロケット砲、さらにはアメリカがウクライナに供与した高機動ロケット砲システム・HIMARS(ハイマース)の数倍もの射程距離を誇る。
北朝鮮が介入するとなれば、真っ先に派遣されるのは砲兵隊だろう。北朝鮮製のロケット砲システムとセットで派遣されれば、ロシア領内からドンバス地域を攻撃でき、ウクライナに大打撃を与えられる。