最新記事

ウクライナ

「ロシア軍より強い」危険な集団...北朝鮮のウクライナ「派兵」が戦況を変える?

North Korea in Ukraine?

2022年8月18日(木)19時34分
A・B・エイブラムズ(米朝関係専門家)

米HIMARS以上の砲撃力を誇る

北朝鮮はロシアと国境を接し、東アジア情勢が緊迫すればロシアと同盟を組む立場にある。ウクライナでロシア軍と共に戦った経験は東アジアでも大いに役立つはずだ。

中国とイランはロシアのウクライナ侵攻を真っ向から非難することには及び腰だが、北朝鮮は公然とロシアを支持してきた。3月初めに国連総会でロシア非難決議が採択されたときにはエリトリア、ベラルーシ、シリアと共に反対票を投じた。ロシア以外で反対票を投じた国はこの3カ国と北朝鮮だけだ。

欧米の影響力が及ばない権威主義的な国々は総じて大した軍事力を有していない。中国とイランを除けば、ロシアの強力な助っ人となり得る国は数えるほどしかなく、北朝鮮はその希少な国々の1つだ。

中国とイランは欧米諸国との関係改善の道を完全に閉ざしたわけではいない。だが長年にわたりはるかに厳しい制裁措置を受けてきた北朝鮮は事情が違う。ウクライナ戦争に介入し、ロシアおよびドンバス地域の親ロ派と関係を強化したところで、失う物ははるかに少ない。むしろ介入によりロシアとの経済的結び付きが強まり、北朝鮮とロシアの孤立化を目指す欧米の制裁の効果が薄れるなら、北朝鮮にとっては万々歳だ。

特にドンバス地域との関係強化は北朝鮮に大きなメリットをもたらし得る。親ロ派が統治する2つの「共和国」は国連に加盟していないから、国連安全保障理事会が決めた制裁措置には縛られず、北朝鮮と自由に貿易を行える。国連加盟国のロシアには労働力や兵器を公然と輸出するわけにはいかないが、ドンバス地域を経由することでそれも可能になる。

北朝鮮の特殊部隊と陸軍、さらにひょっとすると砲兵隊の一部の兵力はロシアのそれよりかなり大きい。しかも地上戦におけるいくつかの分野に重点を置いてきたおかげで、冷戦以降、一連の重要な能力ではロシア軍を上回るレベルに達している。一例を挙げれば北朝鮮の最新のロケット砲システム、具体的にはKN09とKN25はロシア製のロケット砲、さらにはアメリカがウクライナに供与した高機動ロケット砲システム・HIMARS(ハイマース)の数倍もの射程距離を誇る。

北朝鮮が介入するとなれば、真っ先に派遣されるのは砲兵隊だろう。北朝鮮製のロケット砲システムとセットで派遣されれば、ロシア領内からドンバス地域を攻撃でき、ウクライナに大打撃を与えられる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日産、タイ従業員1000人を削減・配置転換 生産集

ビジネス

ビットコインが10万ドルに迫る、トランプ次期米政権

ビジネス

シタデル創業者グリフィン氏、少数株売却に前向き I

ワールド

米SEC委員長が来年1月に退任へ 功績評価の一方で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中