米住宅市場はメルトダウンの崖っぷち
U.S. Housing Market Is in a 'Meltdown': Economist
米住宅建設業者は先行き不安から新しい家を建てなくなっている sl-f-iStock.
<住宅建設コストが高止まりする一方で、一般のアメリカ人の住宅購入能力はインフレや金利上昇で崩壊しつつある>
米国の住宅市場は現在「メルトダウン」しつつあり、今後も売上の急激な低下が続くだろう、と著名エコノミストが警告している。
英パンテオン・マクロエコノミクスの創業者でチーフエコノミストのイアン・シェファードソンはフォーブス誌に対し、2年ぶりの低水準となっている住宅建設業者の景況感は、今後も「さらに下落する」可能性があると語っている。
「ここ数か月で住宅を購入した人は、すぐに、売るに売れずに損失を抱えこむことになるだろう」とシェファードソンは同誌に話した。
全米住宅建設業者協会(NAHB)とウェルズ・ファーゴが毎月発表する「NAHB住宅市場指数」の最新データが7月18日に発表されたが、米国の住宅建設業者の景況感を示すこの指数は、6月で7カ月連続低下し、1カ月の下げ幅としては史上2番目となる12ポイントの低下を記録した。
NAHBのジェリー・コンター会長は、声明のなかでこう述べている。「生産のボトルネック、住宅建設コストの上昇、高いインフレ率により、多くの建設業者が工事にブレーキをかけている。土地や建設、資金調達のコストが、住宅の市場価値を上まわるからだ」
一方、住宅購入者の多くが支払い能力の問題から市場から締め出されていると、NAHBのチーフエコノミスト、ロバート・ディーツは指摘した。供給不足と買い手不足の問題に取り組むためには、(政策当局者が)働きかけて、もっと購入しやすい住宅の供給を増やす必要があると指摘した。
住宅購買力が崩壊
ムーディーズ・アナリティクスのチーフエコノミスト、マーク・ザンディも先頃、次のように本誌に述べた。「高い住宅ローン金利と高い住宅価格があいまって、住宅購入能力が崩壊しつつある。初めて住宅を購入する層が、市場から締め出されている」
18日にこの指数が発表される前から、一部の専門家のあいだでは、7月上旬の雇用統計で示された「住宅建設分野における雇用の減速」は、米国における住宅購入能力が大幅に低下する兆しだとして警戒する声があがっていた。
NAHBによれば、2022年7月よりもこの指数が大きく低下した月は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが最初に米国に広がりつつあった2020年4月だけだという。
新型コロナが過去のものと認識されつつあり、そして著しい低金利が続くなかで、住宅市場は活況を迎えると見られていた。しかし最新のレポートでは、連邦準備理事会(FRB)の金利引き上げにより、それとは逆の観測が生まれている。