最新記事

米住宅市場

米住宅市場はメルトダウンの崖っぷち

U.S. Housing Market Is in a 'Meltdown': Economist

2022年7月19日(火)20時32分
キャサリン・ファン

米住宅建設業者は先行き不安から新しい家を建てなくなっている sl-f-iStock.

<住宅建設コストが高止まりする一方で、一般のアメリカ人の住宅購入能力はインフレや金利上昇で崩壊しつつある>

米国の住宅市場は現在「メルトダウン」しつつあり、今後も売上の急激な低下が続くだろう、と著名エコノミストが警告している。

英パンテオン・マクロエコノミクスの創業者でチーフエコノミストのイアン・シェファードソンはフォーブス誌に対し、2年ぶりの低水準となっている住宅建設業者の景況感は、今後も「さらに下落する」可能性があると語っている。

「ここ数か月で住宅を購入した人は、すぐに、売るに売れずに損失を抱えこむことになるだろう」とシェファードソンは同誌に話した。

全米住宅建設業者協会(NAHB)とウェルズ・ファーゴが毎月発表する「NAHB住宅市場指数」の最新データが7月18日に発表されたが、米国の住宅建設業者の景況感を示すこの指数は、6月で7カ月連続低下し、1カ月の下げ幅としては史上2番目となる12ポイントの低下を記録した。

NAHBindex.jpeg


NAHBのジェリー・コンター会長は、声明のなかでこう述べている。「生産のボトルネック、住宅建設コストの上昇、高いインフレ率により、多くの建設業者が工事にブレーキをかけている。土地や建設、資金調達のコストが、住宅の市場価値を上まわるからだ」

一方、住宅購入者の多くが支払い能力の問題から市場から締め出されていると、NAHBのチーフエコノミスト、ロバート・ディーツは指摘した。供給不足と買い手不足の問題に取り組むためには、(政策当局者が)働きかけて、もっと購入しやすい住宅の供給を増やす必要があると指摘した。

住宅購買力が崩壊

ムーディーズ・アナリティクスのチーフエコノミスト、マーク・ザンディも先頃、次のように本誌に述べた。「高い住宅ローン金利と高い住宅価格があいまって、住宅購入能力が崩壊しつつある。初めて住宅を購入する層が、市場から締め出されている」

18日にこの指数が発表される前から、一部の専門家のあいだでは、7月上旬の雇用統計で示された「住宅建設分野における雇用の減速」は、米国における住宅購入能力が大幅に低下する兆しだとして警戒する声があがっていた。

NAHBによれば、2022年7月よりもこの指数が大きく低下した月は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが最初に米国に広がりつつあった2020年4月だけだという。

新型コロナが過去のものと認識されつつあり、そして著しい低金利が続くなかで、住宅市場は活況を迎えると見られていた。しかし最新のレポートでは、連邦準備理事会(FRB)の金利引き上げにより、それとは逆の観測が生まれている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ミャンマー内戦、国軍と少数民族武装勢力が

ビジネス

「クオンツの帝王」ジェームズ・シモンズ氏が死去、8

ワールド

イスラエル、米製兵器「国際法に反する状況で使用」=

ワールド

米中高官、中国の過剰生産巡り協議 太陽光パネルや石
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加支援で供与の可能性

  • 4

    過去30年、乗客の荷物を1つも紛失したことがない奇跡…

  • 5

    「少なくとも10年の禁固刑は覚悟すべき」「大谷はカ…

  • 6

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 7

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 10

    礼拝中の牧師を真正面から「銃撃」した男を逮捕...そ…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中