お手本は毛沢東──「ゼロコロナ批判」で、ますます意固地になる習近平
All Is Not Well for Xi
習近平は毛沢東のやり方を再演? FLORENCE LOーREUTERS
<「自分への圧力が強ければ強いほど、私の決意は固くなる」。秋の共産党大会で異例の3期目を目指す習に李克強首相らが「異論」を唱え始めた。しかし、歴史が繰り返されるのであれば、経済回復した段階で切られる>
上海に、遅すぎる春が来たようだ。新型コロナウイルスの新規感染者を「ダイナミック」に完封するという「ゼロコロナ」政策の下、2カ月以上も続いたロックダウン(都市封鎖)が、6月初めにようやく解除された(ただし、まだ感染の疑いなどで「隔離」中の人が何万人もいる)。
だが、習近平(シー・チンピン)国家主席が喜ぶのはまだ早い。オミクロン株による感染拡大は各地で続いており、自慢の「ダイナミック・ゼロコロナ」政策にはほころびが目立つ。
いつロックダウンが来るか分からず、先が見えないから中国経済は落ち込んでいる。しかも中国共産党の第20回党大会を数カ月後に控えた今、李克強(リー・コーチアン)首相を含む有力者がゼロコロナ政策の有効性への疑問をほのめかし始めた。
この政策への異論を外国人ジャーナリストに語る財界人や公衆衛生の専門家もいる。中国語の外国メディアには、習が党総書記の続投(3期目)を諦めるのではないかという観測も流れている。詳細は不明だが、指導部内が割れている可能性もある。
中国の場合、特定の政策について意見の対立が表面化するのは、党内に権力争いがある証拠だ。共産党の指導部と長老は昔から、党大会の前には北戴河(河北省の避暑地)に集まって事前の調整を行ってきた。その日程はぎりぎりまで明かされないが、たいてい8月に開かれる。そして今回は、そこで「ゼロコロナ」政策の評価が問われる。
具体的には、ゼロコロナ政策が経済の停滞を招いたと李が主張して習を牽制し、後継首相に自分の腹心を据えようとする(あるいは自身の続投を求める)可能性が指摘されている。
党大会までに習が権威を回復し、あっさり3期目を手に入れる可能性はある。もちろん本人はそのつもりでいる。だが中国共産党の歴史に照らすと、そのためには事前に、自分の続投に異議を唱えそうな党幹部や知識人、財界人の口を封じる必要がある。
現時点で、堂々とそんな発言ができるのは旅行予約サイト最大手トリップ・ドットコムを率いる梁建章(リアン・コンチャン/ジェームズ・リャン)など、ほんのわずかな人だけだ。彼らを黙らせ、思想統制を強化すれば、みんな、おとなしくなる。