最新記事

アメリカ社会

森林火災深刻化する米国 消防当局を悩ませる人員不足

2022年5月6日(金)09時40分
消火活動に当たるアメリカの消防隊員

干ばつの被害に悩む米国西部に、再び森林・原野火災の季節が迫っている。写真はカリフォルニア州サンタローザで消火活動に当たる消防隊員。2020年9月撮影(2022年 ロイター/Stephen Lam)

干ばつの被害に悩む米国西部に、再び森林・原野火災の季節が迫っている。4月、米農務省林野部の幹部であるジェイリス・ホールリベラ氏は、連邦レベルの消防隊員の数は十分であり、いつでも出動できる体制にあると述べて連邦議員らを安心させた。

同氏が議会で「必要な人員は揃う」と証言した数日後、政府は2022年1-3月について、西部各地では観測史上最も降水量が少なかったとして、5月以降、森林火災のリスクが「相当に大きい」と発表した。

だが、気候変動によって深刻化する森林火災の最前線で戦う連邦所属の消防隊員らは、トムソン・ロイター財団の取材に対し、消防隊では今年ひどい人手不足に悩んでおり、近日中には十分な増援が得られないのではないかと恐れている、と話している。

連邦所属の消防隊員は、非公開のチャットやソーシャルメディア上で、欠員の多い消防署や老朽化した施設、整備の不十分な機材についての情報を交換している。

ホールリベラ氏が連邦議会を安心させたのとは裏腹に、トムソン・ロイター財団が入手した2022年3月付の農務省林野部による内部報告では、課題として「人材の採用と離職抑制」を挙げている。

コロラド州の連邦消防隊員ブライアン・ゴールドさんによれば、隊員の士気と人員補充の課題は、多年にわたる予算不足と給与の公正さに関する懸念、施設・機材の老朽化に由来するものであり、「連邦レベルの森林火災体制の存亡に関わる脅威」だという。

ゴールドさんは、消防隊員の仕事は好きだし、近い将来この仕事を辞めるつもりはないとしつつ、そういった人は少数派だと話す。

多くの連邦消防隊員は、給与や福利厚生の点で有利な州・地方自治体の仕事や、民間セクターへの転職に惹かれているという。

安全への懸念に留まらず、消防隊員の新規採用・離職抑制に失敗すれば、「消防体制がみるみる崩れていく」ことになりかねないとゴールドさんは危惧している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中