森林火災深刻化する米国 消防当局を悩ませる人員不足
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干ばつの被害に悩む米国西部に、再び森林・原野火災の季節が迫っている。写真はカリフォルニア州サンタローザで消火活動に当たる消防隊員。2020年9月撮影(2022年 ロイター/Stephen Lam)
干ばつの被害に悩む米国西部に、再び森林・原野火災の季節が迫っている。4月、米農務省林野部の幹部であるジェイリス・ホールリベラ氏は、連邦レベルの消防隊員の数は十分であり、いつでも出動できる体制にあると述べて連邦議員らを安心させた。
同氏が議会で「必要な人員は揃う」と証言した数日後、政府は2022年1-3月について、西部各地では観測史上最も降水量が少なかったとして、5月以降、森林火災のリスクが「相当に大きい」と発表した。
だが、気候変動によって深刻化する森林火災の最前線で戦う連邦所属の消防隊員らは、トムソン・ロイター財団の取材に対し、消防隊では今年ひどい人手不足に悩んでおり、近日中には十分な増援が得られないのではないかと恐れている、と話している。
連邦所属の消防隊員は、非公開のチャットやソーシャルメディア上で、欠員の多い消防署や老朽化した施設、整備の不十分な機材についての情報を交換している。
ホールリベラ氏が連邦議会を安心させたのとは裏腹に、トムソン・ロイター財団が入手した2022年3月付の農務省林野部による内部報告では、課題として「人材の採用と離職抑制」を挙げている。
コロラド州の連邦消防隊員ブライアン・ゴールドさんによれば、隊員の士気と人員補充の課題は、多年にわたる予算不足と給与の公正さに関する懸念、施設・機材の老朽化に由来するものであり、「連邦レベルの森林火災体制の存亡に関わる脅威」だという。
ゴールドさんは、消防隊員の仕事は好きだし、近い将来この仕事を辞めるつもりはないとしつつ、そういった人は少数派だと話す。
多くの連邦消防隊員は、給与や福利厚生の点で有利な州・地方自治体の仕事や、民間セクターへの転職に惹かれているという。
安全への懸念に留まらず、消防隊員の新規採用・離職抑制に失敗すれば、「消防体制がみるみる崩れていく」ことになりかねないとゴールドさんは危惧している。