森林火災深刻化する米国 消防当局を悩ませる人員不足
バイデン政権は、こうした懸念に対処し人員を補充するために日夜取り組んでいると主張している。だが、東部のノースカロライナ州でさえ森林火災のシーズンが長引いている状況のもとで、あまりにも消防隊員が不足しているという現場の声は広がっている。
「もはや、森林火災の『季節』とは呼べない。通年の現象だ」と語るのは、啓発団体「グラスルーツ・ワイルドランド・ファイアファイターズ」のケリー・マーチン代表。「だからこそ積極的に人を雇い、年間を通じて配備する必要がある」
低賃金、宿舎は不足
農務省林野部の報道官によれば、同部と内務省では、2021年の時点で約1万5000人だった常勤・非常勤の連邦消防隊員を今年は1万6700人に増員し、対応を強化する計画だという。
林野部で州有林・民有林担当副主任を務めるホールリベラ氏は、常勤の消防隊員に区分されていない有資格の職員・委託事業者も、必要に応じて消防サービスに投入することができると話している。
「昨年、最も出動が多かった時期には、2万9000人以上の消防隊員が活動していた」とホールリベラ氏。この数字には、支援に駆けつけた上述のような追加スタッフが含まれていると考えられる。
林野部の報道官は、森林火災のシーズンが長期化し困難な状況が生じている中で、消防隊員の採用・維持という課題を真剣に受け止めていると語る。
「だが、宿舎の問題、さらには、火災が多く負担が非常に重くなる年にワーク・ライフ・バランスをどうするかといった問題について、もっとやるべきことがあるとも認識している」
消防隊員の採用・離職防止を困難にしている要因として林野部職員の多くが挙げるのは、賃金の低さと宿舎不足だ。消防隊員の赴任地は人里離れた地域になることもあり、こうした地域では住宅物件が乏しいか、非常に高額になってしまう場合がある。
米国西部のある地区消防当局者は匿名を希望しつつ、「欠員の補充という意味では、森林火災対策グループにとって、恐らくこれまでで最悪の冬だった」と述べ、こうした状況は広く見られると言い添えた。
北カリフォルニアで働く消防車長は、同地域で林野部管理下にある森林のほぼすべてで、今年、消防隊員の定員充足率が65%を切ると予想されていると指摘した。匿名を条件に取材に応じた連邦消防関係者によれば、場所によっては50%を下回るところもあるという。
林野部の地域区分においてカリフォルニアを含む「第5地域」では、職員の採用・離職防止における主要な問題として、給与、貧弱な宿舎事情、雇用における柔軟性の乏しさを挙げている。
2022年3月付の内部報告には、「体制で欠員が生じても迅速に補充されておらず、長期契約の正職員も第5地域の消防体制から離れつつある」とある。