ミャンマー、軍政主導で水かけ祭り復活も国民はボイコット 国内各地で戦闘続く
さらに同日午前10時ごろ、ヤンゴン北部のミンガラドン郡区で、地方事務所に手りゅう弾攻撃があり、通りがかった市民1人が負傷したという。攻撃は反軍政のPDFによるものとみられている。
ヤンゴンでは同日午前11時ごろ、ウェトンゲート付近で地元PDFと国軍部隊による激しい銃撃戦が発生し、少なくとも国軍兵士
10人が死亡したという。
また12日には北部サガイン地方域ではPDFの拠点を国軍が攻撃して制圧したという。
国軍は11日以降、各地で陸上部隊の支援目的として空軍機による空爆攻撃を頻繁に行っている模様で、各地の戦闘激化が続いているという。
加えて中部マグウエイ地方域、マンダレー、サガイン地方域などでは最近、国軍兵士が多数の民家を放火する事案が増加していると地元メディアは報じている。
放火は難を逃れるため他の地域やジャングルに避難して空き家となった民家への放火のみならず、今も市民が生活している民家にも放火しており、焼死などの犠牲者も出ているという。
兵士らが無作為に民家に放火していることは、たとえばある村では軍政支持者でビジネスマンの住居までが放火されたケースや、住民が生活している住居にも放火しているケースが多くみられることからわかる。
4月7日にはある村で20人の村人が国軍兵士から尋問を受け、50歳と29歳の2人が11日に放火された民家の中で発見された。これは殺害した後に証拠隠滅のため、軍が遺体を民家に放置して放火した疑いが濃厚となっている。
このような残虐な軍の行為は各地で確認、報じられ指摘されているが、軍は自らの行動を正当化し、責任を武装市民側に押し付けることを繰り返している。
ウクライナ侵攻で忘れられるミャンマー
こうした国軍の行為はウクライナに侵攻したロシア軍と軌を一にしているが、国際社会はロシア軍の大量虐殺(ジェノサイド)には厳しく糾弾する姿勢を示しているが、ミャンマー国軍の同様の残虐な行為には非難するに留まっており、具体的な動きは見えてこない。
武装市民PDFなどは「国家間の戦争と国内の内戦というのが根本的な違いであろう。国際社会のさらなる支援を待ちながら戦いを続けるだけだ」としている。世界はウクライナの報道の陰に隠れてしまったミャンマーの厳しい現状を今一度、思い起こすべきだろう。
[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など