最新記事

東南アジア

ミャンマー、軍政主導で水かけ祭り復活も国民はボイコット 国内各地で戦闘続く

2022年4月15日(金)20時20分
大塚智彦

さらに同日午前10時ごろ、ヤンゴン北部のミンガラドン郡区で、地方事務所に手りゅう弾攻撃があり、通りがかった市民1人が負傷したという。攻撃は反軍政のPDFによるものとみられている。

ヤンゴンでは同日午前11時ごろ、ウェトンゲート付近で地元PDFと国軍部隊による激しい銃撃戦が発生し、少なくとも国軍兵士
10人が死亡したという。

また12日には北部サガイン地方域ではPDFの拠点を国軍が攻撃して制圧したという。

国軍は11日以降、各地で陸上部隊の支援目的として空軍機による空爆攻撃を頻繁に行っている模様で、各地の戦闘激化が続いているという。

加えて中部マグウエイ地方域、マンダレー、サガイン地方域などでは最近、国軍兵士が多数の民家を放火する事案が増加していると地元メディアは報じている。

放火は難を逃れるため他の地域やジャングルに避難して空き家となった民家への放火のみならず、今も市民が生活している民家にも放火しており、焼死などの犠牲者も出ているという。

兵士らが無作為に民家に放火していることは、たとえばある村では軍政支持者でビジネスマンの住居までが放火されたケースや、住民が生活している住居にも放火しているケースが多くみられることからわかる。

4月7日にはある村で20人の村人が国軍兵士から尋問を受け、50歳と29歳の2人が11日に放火された民家の中で発見された。これは殺害した後に証拠隠滅のため、軍が遺体を民家に放置して放火した疑いが濃厚となっている。

このような残虐な軍の行為は各地で確認、報じられ指摘されているが、軍は自らの行動を正当化し、責任を武装市民側に押し付けることを繰り返している。

ウクライナ侵攻で忘れられるミャンマー

こうした国軍の行為はウクライナに侵攻したロシア軍と軌を一にしているが、国際社会はロシア軍の大量虐殺(ジェノサイド)には厳しく糾弾する姿勢を示しているが、ミャンマー国軍の同様の残虐な行為には非難するに留まっており、具体的な動きは見えてこない。

武装市民PDFなどは「国家間の戦争と国内の内戦というのが根本的な違いであろう。国際社会のさらなる支援を待ちながら戦いを続けるだけだ」としている。世界はウクライナの報道の陰に隠れてしまったミャンマーの厳しい現状を今一度、思い起こすべきだろう。


otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、6月以来の高水準=ベー

ワールド

ローマ教皇の容体悪化、バチカン「危機的」と発表

ワールド

アングル:カナダ総選挙が接戦の構図に一変、トランプ

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中