最新記事

NATO

フィンランドのNATO加盟はプーチンに大打撃──ウクライナ侵略も無駄骨に

How Finland Could Tilt the Balance Against Putin

2022年4月15日(金)08時39分
マイケル・ハーシュ(フォーリン・ポリシー誌上級特派員)

フィンランドのペッカ・ハービスト外相は、ヘルシンキでの記者会見の中で、フィンランドはこれまで、ロシアを挑発しないよう慎重な調整を行ってきたが、プーチンがウクライナ侵攻を決定したことで、その方針は大きく変わったと説明。フィンランドとして、ロシアが今後「これまで以上に高いリスクを取り」、より大規模な部隊を集結させる意欲を見せていることや、核の脅威をほのめかしていることを懸念していると述べ、NATOに加盟申請を行うかどうか、6月後半までに政府が決断を下す見通しだと語った。

スウェーデンもまた、非同盟政策の再検討を迫られている。アンデションが率いる与党・社会民主労働党は伝統的に、同国のNATO加盟には反対してきたが、13日のマリンとの共同会見で彼女は「これは歴史における重要な時期だ。安全保障環境が一変した」と述べた。

特にフィンランドにとっては、NATOへの加盟申請は、ロシアに対するこれまでの慎重なアプローチの大きな転換を意味する。フィンランドは冷戦の際、表向きはロシアに服従するという屈辱的な立場に耐え(その姿勢は「フィンランド化」揶揄された)、西側諸国やNATOと距離を置くことで、ソ連中心のワルシャワ条約機構に加盟せよという圧力をなんとかかわした。

世論もNATO支持に

しかし冷戦終結後は、長年貫いてきた中立主義政策を捨て、徐々に西側諸国に同調。EUに加盟し、アメリカとの防衛協力関係を強化してきた。F18とF35の購入もその一環だ。

ロシアによるウクライナへの本格侵攻が始まった2月24日前までは、フィンランド国民は大半がNATO加盟に反対だった。しかし3月にシンクタンク「フィンランド・ビジネス政策フォーラム(通称EVA)」が実施した世論調査では、回答者の60%(2021年の調査から34ポイント増加)がNATO加盟を支持した。そのほかの複数の調査でも、同じような結果が示された。

過去100年の間に2度にわたってロシアと戦い、第2次世界大戦の際には勇敢にもその侵略を撃退したフィンランドがNATOに加盟すれば、プーチンから見ても歴史的な勢力転換であり、大きな打撃となるだろう。

From Foreign Policy Magazine

20240521issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月21日号(5月14日発売)は「インドのヒント」特集。[モディ首相独占取材]矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディの言葉にあり

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中