殺人犯に「引き寄せられる」人がいる──妥協のない取材から浮かび上がる現実
いじめ、性被害...自殺を考え、白石とやり取りした女性
小学校低学年の頃からいじめを受け、学校に行けなくなり、それを親に言うこともできず、中学に進学してからもいじめに悩まされたという女性。アルコールを飲んでは問題を起こす父親の暴力被害にも遭い、家庭に居場所がないと感じるようになる。
そんな折、Facebookで知り合った自称"30代の医師"を信頼して悩みを聞いてもらうも、実際に会って話をした際にレイプされることに。病院で心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断され、外出もできなくなってしまったため高校を中退。
さらには別の男性からも性被害を受け、そのことがきっかけとなって希死念慮をより深める。やがて自殺を考えるようになってTwitterで思いをつぶやいたところ、白石から返信があってやり取りをするようになったのだった。
これをきっかけに白石は、「一緒に死にますか?」と巧みに誘導していく。だが直美は、ギリギリのところで踏みとどまり難を逃れている。
二人のやりとりはカカオトークに移行する。このときの白石のアカウント名は《_》だった。
_ :色々つらそうなので死にますか?
直美:首吊りで2回失敗してるから不安でしかたがないです。
_ :結び方、緩衝材、高さ、薬、ちゃんと勉強すれば死ねます。
痛いし、苦しい、未遂になると追っている(思っている)人は勉強してないから楽に死ぬ方法が分かっていないだけです。
実際に吊ってみて苦しかったらやめていいので試しに吊ってみますか?
直美:あのー、本気で考えますか?
_ :本気です。安楽死出来るよう、勉強して、道具を揃えて私も吊りましたよ。
直美:未遂ですか?
_ :言葉に語弊がありました。薬を飲まずに、意識がちゃんと飛ぶか確かめました。
私の方法をまとめました。薬を飲み、効いてきたら首に緩衝材を巻き縄をかけ、立ち姿勢もしくは正座姿勢で、血流が止まりやすい位置を探します。顎のラインに沿うようにかけると本当に痛みなく血流が止まります。後は貧血症状が出てきて目の前が暗くなり、ふらふらする状態から意識が飛び死ぬだけです。
私が用意するので、責任持って安楽死させます。(194〜195ページより)
読んでいるだけでも嫌な気分になってくるが、結局のところ直美は返信をせず、実際に会うことをやめた。上記"30代の医師"の男のことが頭をよぎったからだった。またもや性暴力に遭う危険を想像したため、白石の被害者にならずに済んだのだ。
とはいえ当時を振り返った彼女は、著者に対してこうも話している。