最新記事

ウクライナ情勢

アメリカはウクライナ軍事支援を検討中

ARMING THE UKRAINIAN RESISTANCE

2022年3月2日(水)11時40分
ジャック・デッチ、ロビー・グラマー(フォーリン・ポリシー誌記者)
米海兵隊員

ウクライナ南部で行われた多国籍軍事演習に参加した米海兵隊員(2021年7月2日) GLEB GARANICHーREUTERS

<レジスタンスへの武器供与で事実上の「参戦」という道を選べば、悪夢の核戦争へのエスカレートが危惧される。だが米政府と議会の関係者によれば、議論は白熱している>

アメリカ政府がウクライナ市民による武装レジスタンスへの支援を検討している。(ロシア軍が北から侵攻してきた事実を踏まえ)ロシアの目的がウクライナの親米政権の打倒にあるのは間違いなく、その場合にウクライナ軍が首都キエフを防衛できるとは思えないからだ。

匿名を条件に取材に応じた複数の米政府当局者と議会スタッフによれば、議論は白熱している。

一方には、ウクライナのレジスタンスに武器などを供与した場合、法的にはアメリカもロシアとの戦争に加わったことになり、2つの核大国間で緊張が高まるとの慎重論がある。

実際、昨年中も一部の政権幹部は同様な理由で、アメリカ側の軍事的な動きを控えるよう進言していた。それを受けてジョー・バイデン米大統領が、ウクライナへの武器供与を保留したこともある。

ただし米政府機関の中には、武器供与の継続を主張するところも複数あった。

議論は大統領の持つ戦争権限の法的根拠にも及んでいる。ウクライナ政府があっという間に倒れ、議会の承認を待たずに何らかの行動を起こさねばならない事態が、深刻に想定されているからだ。

侵攻の第1報を受けて、米国防総省高官は2月24日に、ロシアは「キエフに乗り込んで」ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の政権を倒し、「ロシア流の統治体制」を構築するつもりだと述べた。

そうなったとしても、アメリカ大統領は武器供与などの軍事援助に踏み切る前に議会の承認を得るべきだと、一部の議会関係者は言う。

交戦中の相手方に兵器を提供すれば、アメリカは紛争当事者になったとロシア側が主張する法的根拠ができ、核大国間の緊張激化を招きかねないと警告する国際法の専門家もいる。

「はっきり言って、これは本物の度胸試しだ。どこまでやるかの覚悟が問われる」と言うのは、元国務省法律顧問のスコット・アンダーソン(現ブルッキングス研究所客員研究員)だ。

「ウクライナ市民への武器供与は(ロシアとの)紛争に身を投じることを意味するという主張を、ロシアがどこまで押し出してくるか。そこが問題だ」

むろん、市民レジスタンスへの武器供与という議論はまだ始まったばかりで、どうやって武器供与のルートを確保するかも決まっていない。事情通の当局者によると、政権内部の意見も分かれている。

ロシアがウクライナ領内へのミサイル攻撃と爆撃を始める前から、国防総省は陸路での武器搬入ルートを探っていたらしい。

「空輸が不可能になった場合の手も考えている」と、前出の当局者は述べた。現にロイド・オースティン米国防長官も、ウクライナへの武器供与を続けると公の場で約束している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:またトランプ氏を過小評価、米世論調査の解

ワールド

アングル:南米の環境保護、アマゾンに集中 砂漠や草

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 9
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 10
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中