最新記事

ウクライナ情勢

アメリカはウクライナ軍事支援を検討中

ARMING THE UKRAINIAN RESISTANCE

2022年3月2日(水)11時40分
ジャック・デッチ、ロビー・グラマー(フォーリン・ポリシー誌記者)

220308P22_BGS_02.jpg

ウクライナ東部ハリコフで行われた民間人向けの軍事演習(2022年2月19日) VYACHESLAV MADIYEVSKYY-REUTERS

当局筋によれば、米国家安全保障会議(NSC)は国防総省によるレジスタンス支援の選択肢を排除していない。

ただし、その実現可能性(いつどうやって実行するか、どのような法的権限を主張できるのか)を問い、これ以上の兵器が必要なのかも疑問視している(バイデン政権は昨年来、既にウクライナに6億ドル以上の防衛的兵器を提供している)。

そもそも、アメリカ政府内でこうした意見対立が起きるのは当然のことだという見方もある。

この1年間、NSCが武器供与に消極的だったのは、それがロシアとの緊張を増すだけと考えたからだ。それでバイデン政権は昨年の4月と12月に、ウクライナ政府への軍事支援の実行を保留した(ただし、その後にゴーサインを出している)。

米軍の兵器が必要とされる

NSCのある広報担当官は匿名を条件に、電子メールでこう言ってきた。大統領補佐官たちは安全保障環境の変化に応じて「包括的かつ厳密な政策の見直し」を進めることに力を入れている。もちろんアメリカはウクライナの現政権支持に注力しており、そのため承認済みの支援も実施する。

ロシア軍が攻めてきてもウクライナ国民を守るため、アメリカは「さまざまな不測の事態に備えた計画」を用意していると、この広報担当官は言った。経済的、人道的な援助も含めてのことだ。

ウクライナでは、ゼレンスキーが2月24日に国を守る気概のある市民全てに武器を渡すと語り、国防相も、ウクライナのパスポートを持つ市民には武器を与えると発言した。

ウクライナ外相のドミトロ・クレバも先に、戦争が始まれば「この国の領土を、全ての町や村を守るために、勝利の日まで戦い抜く」と述べていた。

アメリカでは多くの共和党議員が、事態の深刻化と紛争の長期化を見越して、ウクライナ市民がロシアの占領軍と戦えるよう支援すべきだと論じている。

そしてロシアによる占領が現実となった場合に備え、ウクライナ市民の武装レジスタンスを支援する政策の枠組みを定める法案を用意した。題してNYET(ニエット)、ロシア語では「NO」の意で、英語では「ヨーロッパの領土を渡すな」の頭文字を連ねたものだ。

ある高位の議会筋が匿名を条件に語ったところでは、そうしたレジスタンス運動への支援に必要なのは短距離ミサイルや地雷、ライフル、通信機器、そしてアメリカの情報網へのアクセスだという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中