アメリカはウクライナ軍事支援を検討中
ARMING THE UKRAINIAN RESISTANCE
ウクライナ南部で行われた多国籍軍事演習に参加した米海兵隊員(2021年7月2日) GLEB GARANICHーREUTERS
<レジスタンスへの武器供与で事実上の「参戦」という道を選べば、悪夢の核戦争へのエスカレートが危惧される。だが米政府と議会の関係者によれば、議論は白熱している>
アメリカ政府がウクライナ市民による武装レジスタンスへの支援を検討している。(ロシア軍が北から侵攻してきた事実を踏まえ)ロシアの目的がウクライナの親米政権の打倒にあるのは間違いなく、その場合にウクライナ軍が首都キエフを防衛できるとは思えないからだ。
匿名を条件に取材に応じた複数の米政府当局者と議会スタッフによれば、議論は白熱している。
一方には、ウクライナのレジスタンスに武器などを供与した場合、法的にはアメリカもロシアとの戦争に加わったことになり、2つの核大国間で緊張が高まるとの慎重論がある。
実際、昨年中も一部の政権幹部は同様な理由で、アメリカ側の軍事的な動きを控えるよう進言していた。それを受けてジョー・バイデン米大統領が、ウクライナへの武器供与を保留したこともある。
ただし米政府機関の中には、武器供与の継続を主張するところも複数あった。
議論は大統領の持つ戦争権限の法的根拠にも及んでいる。ウクライナ政府があっという間に倒れ、議会の承認を待たずに何らかの行動を起こさねばならない事態が、深刻に想定されているからだ。
侵攻の第1報を受けて、米国防総省高官は2月24日に、ロシアは「キエフに乗り込んで」ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の政権を倒し、「ロシア流の統治体制」を構築するつもりだと述べた。
そうなったとしても、アメリカ大統領は武器供与などの軍事援助に踏み切る前に議会の承認を得るべきだと、一部の議会関係者は言う。
交戦中の相手方に兵器を提供すれば、アメリカは紛争当事者になったとロシア側が主張する法的根拠ができ、核大国間の緊張激化を招きかねないと警告する国際法の専門家もいる。
「はっきり言って、これは本物の度胸試しだ。どこまでやるかの覚悟が問われる」と言うのは、元国務省法律顧問のスコット・アンダーソン(現ブルッキングス研究所客員研究員)だ。
「ウクライナ市民への武器供与は(ロシアとの)紛争に身を投じることを意味するという主張を、ロシアがどこまで押し出してくるか。そこが問題だ」
むろん、市民レジスタンスへの武器供与という議論はまだ始まったばかりで、どうやって武器供与のルートを確保するかも決まっていない。事情通の当局者によると、政権内部の意見も分かれている。
ロシアがウクライナ領内へのミサイル攻撃と爆撃を始める前から、国防総省は陸路での武器搬入ルートを探っていたらしい。
「空輸が不可能になった場合の手も考えている」と、前出の当局者は述べた。現にロイド・オースティン米国防長官も、ウクライナへの武器供与を続けると公の場で約束している。