最新記事

分配

カリフォルニア州知事がアメリカ初の皆保険を提案、不法移民にも

Gavin Newsom Proposes Health Coverage for All Illegal Immigrants in California by 2024

2022年1月11日(火)21時05分
ローラ・コーパー
カリフォルニア州のニューサム知事

新型コロナで大打撃を受けた労働者層に、富裕層から得た税収を再配分しようとしているニューサム知事(写真は2021年9月)

<民主党のニューサム知事は、富裕層やハイテク企業から得た税収を最も恵まれない層のために使おうと提案。これぞ真の「分配」か?>

米カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は1月10日に、2022~2023年度の予算案を発表。合法・違法を問わず全ての移民に対して、公的医療保険を提供する計画を提案した。

これは無保険の住民を減らすための同州の取り組みの一環で、これまでの取り組みでも成果は出ている。同州では独自にメディケイド(低所得者医療保険制度)の拡大版を導入しているが、まだその適用対象となっていない人のうち最も多いのが、低所得の不法移民だ。

ある分析によれば、この不足を補うためには年間24億ドルの予算が必要で、ニューサムは同州予算(総額2864億ドル)の黒字分をこれに充てる計画だ。カリフォルニア州議会分析官室は、財政黒字は少なくとも310億ドルにのぼる見通しだとしているが、ニューサムは「財政黒字」をより幅広く定義しており、さらに大規模な財政黒字が得られると推定している。

カリフォルニア州は2019年から、26歳以下の移民に対して公的医療保険の提供を始め、2021年からは50歳以上の移民も同保険の対象としている。ニューサムは、この制度でカバーされていない残りの人々についても、2024年から同保険の適用対象としたい考えだ。この適用拡大計画の導入や財源に関する詳細は、まだ明らかになっていない。


万引き対策や新型コロナ対策も

ニューサム率いる州政府は、一部の移民が無保険状態にある問題は、州が対処すべき「危急存亡」の問題の一つと言ってきた。それ以外の危機には、新型コロナウイルス感染症のパンデミックや山火事、干ばつ、ホームレスや治安の問題が含まれている。

2021年に決定された公的医療保険制度の適用拡大(50歳以上の移民を適用対象とする)には、年間およそ13億ドルの税金が投入されることになる。

ニューサムが発表した今回の予算案については、今後、議会で多数派を占める民主党(ニューサムも民主党)との交渉が続くことになる。ニューサムが5月に予算案の改定版を発表すれば、議論はさらに白熱することになるだろう。

一部の進歩的な民主党議員は先週、カリフォルニア州にアメリカ初の皆保険制度を創設することを提案。大幅な増税によって財源を賄う案で、これを実現するためには有権者の承認が必要になるだろう。

ニューサムはまた予算案の中で、万引きに対する法執行の取り組み強化に3億ドル、新型コロナウイルスの検査や病院へのスタッフ派遣などに27億ドルを投じることを約束した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国、外資参入規制を緩和 25年版ネガティブリスト

ビジネス

米関税措置が為替含め市場に波及、実体経済に悪影響=

ビジネス

韓国LG電子、インド子会社のIPO延期=関係筋

ビジネス

米TI、第2四半期売上高見通しが予想超え アナログ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負かした」の真意
  • 2
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学を攻撃する」エール大の著名教授が国外脱出を決めた理由
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考…
  • 6
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 7
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 8
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 9
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 10
    「アメリカ湾」の次は...中国が激怒、Googleの「西フ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 6
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 7
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中