中国「サラミ戦術+ドローン」が台湾を挑発する
TAIWAN ON THE BRINK?
中国は広東省の航空ショーで無人戦闘機「彩虹6」を披露(2021年9月) ALY SONGーREUTERS
<台湾のADIZ(防空識別圏)侵入を繰り返す中国空軍。無人機(UAV、UCAV)が導入される可能性は高いが、そうなれば一気に中台紛争の危険度が増す>
中国軍機が最近、台湾のADIZ(防空識別圏)に侵入を繰り返している。この問題にさまざまな議論が出るなかで、特に注目されたのが英字紙・台北時報の社説だ。
同紙は、中国軍の頻繁なADIZ侵入によって台湾軍が神経をすり減らしていることから、台湾は中国軍機の侵犯を監視するために無人航空機(UAV)の開発・配備をさらに進めるべきだと主張した。
台北時報は、UAVは有人の戦闘機より費用対効果と安全性が高いと主張。さらに付加的な利点として、中国空軍にとってのリスクが増すとしている。
「人民解放軍が台湾領空でUAVを撃墜すれば、国際社会から一方的な攻撃、場合によっては戦争行為と見なされ得る」というのだ。
だが中国空軍が突然、台湾のUAVを撃墜する判断を下すとは考えにくい。中国は台湾への圧力を強めているが、あからさまな戦争行為に出る兆候は見られない。
むしろADIZ侵入の目的は軍事演習や、何らかの政治的意図だと思われる。
実際、中国軍機による侵入は、台湾が他国の代表団を迎えたときや、中国と台湾の重要な記念日に合わせて行われることが多い。
とはいえ、中国のADIZ侵入にUAVで対抗する案に検討の価値はある。だがUAVを先に配備するのは台湾ではなく、中国だろう。
近いうちに、中国がADIZ侵入にUAVを使うケースが増えるとみられる。
事実、中国は新型のUAVや無人戦闘機(UCAV)の開発・試験・運用を積極的に行っている。
広東省珠海での航空ショーで展示された無人戦闘機「彩虹6(CH6)」は、台湾海峡での軍事作戦を想定したものだと、北京を拠点とする軍事アナリストの宋忠平(ソン・チョンピン)は指摘する。
英国際戦略研究所(IISS)のフランツシュテファン・ガディは、中国の軍事作戦でUAVとUCAVの重要度がいかに高まっているかを分析した。ガディが使ったシナリオは、中国が2028年に台湾およびアメリカと衝突し、そこでUAVとUCAVを投入するというものだった。
しかし中国がUAVなどを最初に投入するのは、台湾をめぐる大規模な戦闘ではなく、台湾のADIZ侵入のような小規模で本格的な作戦である可能性が高い。
中国空軍はUAVなどを作戦に使うため、場数を踏もうとするはずだ。その意味でADIZ侵入は絶好の機会となる。
UAVなどを台湾との紛争で投入するため、中国空軍は平時の作戦で経験を積みたい。ADIZ侵入は「グレーゾーン戦略」(平時でも戦時でもない状態での作戦)だと言える。