年金+バイトは12万円ポッキリ それでも山谷に暮らす男が月25万円を稼げる秘策とは
偽名を使って生活保護を受給していた人間が逮捕されるといった事案もある。それはつまり、生活保護は偽名でも受給できるということだ。ならば、収入の無申告などわけない。行政の制度に不備があり、ザルだということか。
「いえ、収入の申告は義務です。そのため、そこはある程度、"収入があった被保護者は申告をする"という性善説によって成り立っています。全員の生活実態を隅々まで把握することは不可能です。働く際に偽名を使ったりほかの人の口座を使ったりしているかもしれない。ダンボール手帳の仕事とシルバー人材派遣の仕事も、行政とはいえ第三セクター的なポジションにある。厳密な身元確認はできていないはずです。そもそも、高齢者に仕事を与えることが本分なわけですから」
不正防止にフォーカスすると、救いたい人を救えない
生活保護の不正受給をゼロにするためにあらゆる対策を取れば、それは生活保護のハードルを上げることに繋がってしまう。それこそ「水際対策」の横行が再び起こるはずだ。悪用している人が責められるべきであって、見つけられなかった行政を問い詰めるのは賢くない。「それは性善説だ」と言われそうだが、性善説を前提としているからこそ本当に困っている人を助けることができるのだ。
ギャンブルで金を使い果たした生活保護受給者が大勢押しかけているのにも関わらず、全員が二周もらえる量の食材を毎回用意する炊き出し団体もきっと同じ考えだ。不正をする人のことをメインで考えていたら、救いたい人を救えない。生活保護の制度も炊き出しも、悪用する人にフォーカスを当てているわけではないのだ。
國友公司(くにとも・こうじ)
ライター
1992年生まれ。筑波大学芸術専門学群在学中よりライター活動を始める。キナ臭いアルバイトと東南アジアでの沈没に時間を費やし7年間かけて大学を卒業。編集者を志すも就職活動をわずか3社で放り投げ、そのままフリーライターに。元ヤクザ、覚せい剤中毒者、殺人犯、生活保護受給者など、訳アリな人々との現地での交流を綴った著書『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)が、2018年の単行本刊行以来、文庫版も合わせて6万部を超えるロングセラーとなっている。
Twitter:@onkunionn