最新記事

中国

おまけ狙いの爆買い男性に106食分を売った中国ケンタッキー、当局から正式に怒られる

2022年1月19日(水)13時00分
青葉やまと

中国ケンタッキーでおまけの限定フィギュア目当ての爆買いが発生して問題に TVBS-YouTube

<KFCの販促キャンペーンに乗り、ある消費者は18万円を支出。食品ロスと衝動買いを招いたとして、消費者協会は指導に踏み切った>

中国のとあるケンタッキーフライドチキン(KFC)の店舗において、男性が106食分のセットを購入した。支払った額は1万元(約18万円)を超える。通常は1000円もあれば満腹になることを考えれば、その180倍の金額だ。男性のねらいは食事そのものではなく、おまけのフィギュアだった。

中国KFCは同国進出35周年を記念したプロモーションとして、限定フィギュアをおまけで提供している。指定の食事セットを購入すると、6種類のうち1体のフィギュアがついてくる。どのフィギュアが手に入るかは完全にランダムとなっており、これが問題の男性のような熱心なリピーターを多く生むきっかけとなった。

出現率には偏りがあり、最もレアなデザインのものは72体に1体しか封入されていない。6種類すべてをコンプリートするには、相当の回数の食事を覚悟しなければならないしくみだ。セットの価格自体もファストフードとしては高額で、1食あたり99元(約1800円)に設定されている。

人気フィギュアが招いた争奪戦

単なる安価な独自商品であれば、ここまでの人気にはならなかったかもしれない。しかし、今回KFCが用意したのは、中国POP MART(ポップマート)社が販売する人気フィギュア「DIMOO(ディムー)」の限定版だった。

DIMOOは高クオリティのフィギュア・シリーズで、夢の世界に迷い込んだ男の子をテーマに、髪型や服装などが異なるバリエーションを展開している。大人でも楽しめるフィギュアを標榜しており、あどけない表情と精巧なつくりが売りだ。中国国内だけでなく、海外でも若者を中心にヒットしている。

今回おまけとして用意された特別版は、男の子が創業者のカーネル・サンダースに扮したバージョンや、フライドポテトの箱に入って眠るポーズをしたものなど、いずれもKFCならではの限定デザインだ。

かわいらしさと入手の難しさがコレクター心理を刺激し、各地で買い占め騒動にまで発展するほどにキャンペーンは盛り上がった。106食を購入した男性も、限定フィギュア欲しさに大量入手を図った模様だ。想定を上回る需要によって用意したフィギュアが完売したことから、KFCは予定を繰り上げる形ですでに提供を終了している。

当局はフードロスを問題視

一見大成功に見えるこのキャンペーンだが、中国公営の消費者協会はおかんむりだ。食べ物の過剰購入を促しているとして、長文の文書でKFCに対し是正を促した。文書は106食を購入した冒頭の男性を例示し、顧客に衝動的な支出を促したとも指摘している。

サウスチャイナ・モーニングポスト紙によると協会は、「単にランダム封入のおもちゃの限定版を引き当てるだけの目的で消費者を容易に衝動買いへと誘導するものであり、結果として度を超えた食品の購入と食品廃棄を招くものである」と強く非難している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザでの戦争犯罪

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、予

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッカーファンに...フセイン皇太子がインスタで披露
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 5
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 6
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中